ザ・ムーン
2009/1/13
In the Shadow of the Moon
2007年,イギリス,100分
- 監督
- デヴィッド・シントン
- 撮影
- クライヴ・ノース
- 音楽
- フィリップ・シェパード
- 出演
- バズ・アルドリン
- アラン・ビーン
- マイケル・コリンズ
- チャールズ・デューク
1969年、アポロ11号の2名の宇宙飛行士が月面に降り立った。それから72年のアポロ17号まで12人が月に降り立ったが、その12人だけが月面を経験した人類なのである。彼らはその経験を振り返り、今何を思うのか。
宇宙飛行士たちのインタビューとNASAに保管されていた未公開映像で構成されるアポロ計画の全容を振り返ったドキュメンタリー。『アポロ13』のロン・ハワードが提供に名を連ね、月に行くことの意義を問う。
ニール・アームストロングが月面に降り立ち「これは一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」といったのははるか40年の昔である。人類は40年も前に月に立ちながら、1972年以降は誰一人として月面に降り立っていない。それには月に降り立つことに科学的な意味があまりないなどの理由もあるのだが、そのことが“実は月面に降り立ってなどいない”などという疑いを抱かせることになってしまっている。
この作品は実際に月に降り立った宇宙飛行士たちのインタビューを中心に、その体験を語らせて月に降りることの現代的意味を探るプロジェクトということができるだろう。宇宙飛行士たちは口々に地球に生きることができて幸福だと語り、人類がいったいであるという意見を述べる。つまり、宇宙から見ればちっぽけだけれど美しい星に住むわれわれはその奇跡に感謝し、手に手をとって生きなければならないということだ。
言っていることはまさにその通りだと思う。しかし彼らの言葉だけでは、そのことを実感することはなかなか出来ない。なぜなら私たちは月に降り立ったこともなければ、宇宙から地球を眺めたこともないからだ。
彼らの“宇宙体験”を見るものに共有させたいのだったら、10000本にも及ぶというNASAの未公開映像をもっとふんだんに盛り込んで、少しでも彼らの宇宙体験に近い体験をさせて欲しかった。彼らの言葉は真実だろう。しかし、宇宙に行かなければそれを体感できないのではその言葉に何の意味があるだろうか。彼らは体験した。ならば、その体験を人々に分け与え、同じような“宇宙意識”を持たせることこそが重要なのではないか。
この作品では、月に行くまでの話がインタビューの中心であり、彼らのその後の人生はまったく語られていない。彼らの体験を生かすために重要なのは、彼らの“月”後の人生なのではないか。NASAの映像を使って、彼らが体験したのと同じ月旅行を構成することができれば、それは見る者に大きな印象を与えるだろう。
そのような工夫がないこの作品は、大きなことを言っておきながら、実はただ陰謀説に反論するために作られた作品ではないかとうがった見方をしたくもなってしまう。陰謀説に触れられるのが最後の最後にほんの少しだというのもわざとらしい。
見て損はないけれど、なんかもっと壮大でわくわくするものも作れたんじゃないか、そんなもったいなさを感じてしまう。