南へ向かう女たち
2009/1/16
Vers le Sud
2005年,フランス,106分
- 監督
- ローラン・カンテ
- 原作
- ダニー・ラファリエール
- 脚本
- ロバン・カンピヨ
- ローラン・カンテ
- 撮影
- ピエール・ミロン
- 出演
- シャーロット・ランプリング
- カレン・ヤング
- ルイーズ・ポルタル
- メノシー・セサール
ハイチのリゾートへとやってきた中年女性のブレンダ、さっそく浜辺で数年前に出会ったレグバという現地の青年と再会する。しかしレグバは今は同じくリゾートにやってきているエレンと親しくしていた。さらにエレンはそのホテルに滞在する中年女性たちのリーダーのような存在だった。
2008年に“Entre les Murs”でカンヌ映画祭パルム・ドールを獲得したローラン・カンテの監督作品。
ハイチのリゾート地に集う中年女性たち、その目的は現地の若者たち。若者たちも中年女性たちを目当てにそのホテルに集まってくる。ブレンダは3年前に夫婦でそのホテルを訪れ、レグバに出会った。そしてレグバとの秘密の情事にオーガズムを覚えてしまった。そのレグバに会うために再びそのホテルにやってきたブレンダだったが今回は他にも一人でやってきた中年女性たちがいて、そのリーダー格のエレンがレグバのパートナーとなっていた。
そのエピソードが始まる前、空港でブレンダを出迎えるホテルの従業員に現地の女性が娘を引き受けてくれと話しかける。それはハイチという国の窮状をほのめかす第一歩であり、その後もレグバが街に戻ったときにハイチが貧しく不平等な国であることが明確に描かれることになる。
しかし観光客たちの目にはその事実は見えない。彼女たちは素晴らしい海と素晴らしい男達に魅了されるだけで、自分と女たちと男たちの下らない恋愛ゲームに気をとられているだけだ。
この作品は描くのはその部分だ。中年女性の性とハイチの国の窮状というまったく相容れない主題を同じ俎板の上に載せることで何かを訴えようとするのだ。
ハイチという国はもとはフランスの植民地で、労働力としてアフリカから黒人達が連れてこられた。しかしその黒人達が早くから立ち上がり、フランスからの独立を19世紀末に達成し、世界初の黒人共和国を建国した。その独立の立役者トゥサン・ルーベルチュールはブラック・ジャコバンと呼ばれ、ある種のヒーローと見られているわけだが、現在のハイチは世界の最貧国の一つである。
そんなハイチを作り上げたフランスやアメリカの金持ちの中年女性たちが現地の黒人青年に魅せられる。それは、植民地時代の白人領主夫人と黒人奴隷との関係を思い起こさせる。植民地時代、白人領主が黒人奴隷の女性を強姦して多くの混血児が産まれたというのは有名な話だが、白人領主の夫人たちも黒人奴隷と情事を重ねていたといわれる。この作品に描かれるのはそのような関係の現代版というわけだ。
そんなカルチュラル・スタディーズ的なことを想起させはするのだけれど、それだからこそこの中年女性たちの展開するドラマがどうでもいいことのように見えてきてしまって、楽しめない。最終的に浮かぶもやもやした感じや、そのドラマのくだらなさを描くことが目的なのだとしたら、そのドラマの部分が冗長すぎる。そして、最後まで目が覚めない彼女達を見るのも痛々しい。欧米の植民地主義への皮肉としては成立しているが、そのような作品として見られるとは思えない。最後までなんだかもやもやとした作品だ。