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大阪ハムレット

★★★.5-

2009/1/18
2008年,日本,107分

監督
光石富士朗
原作
森下裕美
脚本
伊藤秀裕
江良至
撮影
猪本雅三
音楽
遠藤浩二
出演
松坂慶子
岸部一徳
森田直幸
久野雅弘
加藤夏希
本上まなみ
preview
 息子3人を抱える久保家で突然父親が亡くなってしまう。葬式の手伝いをしていたその父の弟がいつの間にか家に居つき、家族もなんとなくそれを受け入れる。中3の長男政司はふけ顔が悩み、次男の行雄は喧嘩では負けたことがない暴れん坊、三男の宏基は本気で女の子になりたいと願っている。
 原作は森下裕美の同名コミック。下町らしい人情と笑いが心地よい佳作。
review

 ちょっと変わった家族が繰り広げる意外と普通の物語。ネタやエピソードは過剰なほどにベタだが、それが味だといえるだろう。舞台は現在だが、下町のごみごみとした感じはノスタルジーをかきたて、画面に映るものすべてがノスタルジックなものとなるよう気が使われている。

 役者たちがその世界にすっと溶け込んでいるのが感じがいい。松坂慶子の大阪弁も最初は不自然な感じがするが慣れるとその口調に彼女の人柄がにじむ。岸部一徳は“へたれ”をやらせたら天下一品、子供たちも無難な配役という感じで、ひとり異彩を放つという感じの加藤夏希も意外と悪くなかった。

 しかしエキストラがいまひとつ。エキストラだから演技がうまいわけはないのだが、演技の下手さが問題なのではなく、その不自然さが映画の作り物っぽさを際立ててしまうのが問題だ。学芸会のシーンの父兄なんかは特にひどいし、クラスメートの子供や通行人なんかは普通ならNGじゃないかというカットが使われてしまっているように見える。これは監督の力量の問題であると思う。現場でそれがOKカットかどうかを判断する能力、編集で物語を犠牲にしても不自然なカットを取り除く勇気、それがこの監督にはなかったのではないか。

 監督の光石富士朗はVシネマで数多くの監督作品があり、劇場版の映画では『富江replay』や『おぎゃあ。』といった作品を撮っている。お金も時間もかけないで撮ることになれてはいるんだろうけれど、それで作品の質が落ちてしまうようでは元も子もない。いくら制限があってもその中でどれだけの仕事ができるかというのが映画監督の力量だとするならば、この監督は劇場用映画を撮るにはまだちょっと力量不足という感じだ。もちろん力量十分の監督がどれほどいるのかというのは言わずもがなだが…

 まあしかしこの映画に関しては全体がいい意味でも悪い意味でも作り物じみているということなので、バックグラウンドの不自然さに目をつぶることはできる。この風変わりな物語の魅力にはその不自然さを凌駕するくらいのものがあると思う。原作は森下裕美の漫画、「少年アシベ」に似た風変わりで面白い漫画なのかもしれない。

 タイトルに“ハムレット”とあり、劇中でもハムレットが出てくるから「ハムレット」と物語的な関係があるのかと思ったのだが、それは特にないようだ。タイトルも風変わりというだけであまり意味はない。

Database参照
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国別・年順: 日本90年代以降

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