ヴィットリオ広場のオーケストラ
2009/1/30
L'Orchestra de Piazza Vittorio
2006年,イタリア,90分
- 監督
- アゴスティーノ・フェッレンテ
- 脚本
- アゴスティーノ・フェッレンテ
- 撮影
- ダニエレ・ポーリ
- 出演
- マリオ・トロンコ
- アゴスティーノ・フェッレンテ
ローマの旧市街にあるヴィットリオ広場は移民が増えてイタリア人がいなくなり、他民族が共生する町となった。そこにある古い歴史を持つ“アポロ劇場”を救うためマリオ・トロンコらは“アポロ11”という組織を立ち上げ、ヴィットリオ広場周辺に住む外国人たちによる楽団を組織しようと試みる…
ヴィットリオ広場オーケストラが誕生するまでを追った音楽ドキュメンタリー。
豊かな国にやってくる移民と、それを快く思わない市民の対立、それはヨーロッパの多くの国で見られる風景だ。イタリアもそれは例外ではなく、20世紀初頭、急増する移民に対する市民の反発は強まっていた。しかしそれでも移民たちはやってきて、自分たちの場所を確保する。ローマではそれがヴィットリオ広場で商店主が中国人に代わり、バングラデシュやモロッコやセネガルやエクアドルからさまざまな人たちがやってくる。
そんなヴィットリオ広場にある歴史と伝統を持つアポロ劇場。この劇場がビンゴ・ホールになってしまいそうだというのでイタリア人たちが立ち上がり、市に買い取らせる。そして、その地域のものであることを主張し、移民たちとの共生を訴えるために移民たちによるオーケストラを結成しようというのだ。
しかし、出稼ぎに来た移民たちだから音楽をやる余裕などあるわけもなく、なかなかメンバーなど集まらない。それでもいろいろなつてをたどってメンバーを集める。それはそれは大変なんだけれど、そこはイタリア人、何人か集まればすっかり明るく盛り上がってしまう。
このイタリア人のラテン気質はイタリアにやってきた移民たちにも移っているのか、それともイタリアの気質にあった移民たちだけがこのオーケストラに集ってくるのか、とにかくみんな明るい。オーケストラの中心になるのは、ボーカルをとるインド人とアラブ人、そしてリズムを刻むセネガル人とインド人。そのアップテンポなリズムは映画全体を華やかなものにする。
苦労はあったにしてもオーケストラは実現する。それを見て祝福したくなるし、とてもいい気分になる作品だ。
ただ気になったのは中国人の存在だ。映画の序盤でイタリア人の商店が中国人の店に代わるという説明が出てくるし、画面にもたくさんの中国人が登場する。しかし彼らは一様に非協力的で、公園で社交ダンスをする中国人はいてもオーケストラに入ろうという中国人はいない。中国だって二胡やらなにやら伝統的な楽器はあるのに誰も現れはしないのだ。
そのあたりでこの活動が本当にうまく行ったとはいえないような気がするし、移民が問題であり続ける要因の一つが垣間見えるような気がしてなんだか頭を抱えてしまう。
しかしまあ、明るくっていいね。