たみおのしあわせ
2009/2/22
2007年,日本,118分
- 監督
- 岩松了
- 脚本
- 岩松了
- 撮影
- 山崎裕
- 音楽
- 勝手にしやがれ
- 出演
- オダギリジョー
- 麻生久美子
- 小林薫
- 原田芳雄
- 大竹しのぶ
- 忌野清志郎
父親と二人暮しの神崎民男は何度目かのお見合いに望むことになった。今度の相手は父親の会社の社長の紹介、お見合いは何故か成功し、ふたりは結婚することに。父親のほうは会社の部下の宮地との関係が進展しそうだったが…
俳優、劇作家として知られる岩松了が『時効警察』の仲間と作った15年ぶりの監督作品。
基本的にコメディ映画なわけだが、岩松了という役者を見ればわかるとおり、爆笑を誘う映画ではない。岩松了というと三木聡作品にふせえりなんかとよく出演していて、その中で“変な”笑いを担当する。今回は主演がオダギリジョーと麻生久美子という『時効警察』のふたり、岩松了も『時効警察』に出演しているし、1エピソードでは演出もしている。この映画のほうに三木聡が出演していることからしても、『時効警察』とは密接な関係にあり、いわば“三木組”の作品の延長にあると言っていいだろう。
そして、この作品は三木聡の作品のムードをもう少し軽く優しくした感じである。笑いも控えめ、“変”さも控えめ。とにかくダサいオダギリジョーのファッションなんかは相当面白いけれど、それ以外はなんとなく控えめな印象だ。強烈なインパクトがある神埼父の同僚なんかはもっといろいろ面白いことができそうだったのにと思う。
この作品で一番残念なのはやはり岩松了とふせえりそして松重豊の不在だ。三木聡作品で彼らが演じていたおかしな人たちの役回りを演じる人たちがここにはいないのだ。岩松了自身は忌野清志郎とコンビで出演し、ちょっとおかしな人たちとして存在しているけれど、彼らは主人公たちの知り合いではなく、たまたま出会う人たちに過ぎない。もっと主人公たちに近い位置で映画をかき回すそんな変な人たちがいないと、三木聡的世界の面白さはなかなか出てこない。
なので、全体的にはどうも今ひとつというかごく普通の映画になってしまったという印象だ。岩松了はやはり監督よりも役者がいい。
しかし、終わり方は私は好きだった。コメディ映画にありがちなドタバタや逆に教訓じみたものではなく、きれいにオチがつくわけでもない。むしろなんかしんみりして不思議な感じで終わる。しかしそれはこの作品で語られていたことを考え直させるような終わりかただ。すべての物語が終わったあとで付け足されたような短いエピソードが映画全体の解釈をすべて変えてしまうかもしれない可能性を持つ。そんな思わせぶりな終わり方がなかなかよかった。
いろいろな疑問は氷解しないし、そんなのはありえないということも多いのだけれど、まあ別にすべてが理解できる必要はないし、出来るはずもないというあきらめのようなものがあって、それが心地よさにもなっているように思える。
何事も納得しないとだめだという人には苦痛以外の何ものでもないだろうけれど、ぼんやりとおおらかな人なら何かしっくりくるところがあるような気もする。