海賊版=BOOTLEG FILM
2009/5/23
1999年,日本,74分
- 監督
- 小林政広
- 脚本
- 小林政広
- 撮影
- 佐光朗
- 音楽
- 高田渡
- 出演
- 柄本明
- 椎名桔平
- 中野若葉
- 舞華
- 北村一輝
雪国をビールを飲みながら車で走る二人の男、運転している立夫はやくざ、助手席の清司はポリス。清司の元妻で立夫の元恋人である文子の通夜に行くところらしい。ふたりは文子との想い出を語りあうが、立夫が突然トランクに死体が乗っていると言い出す…
ピンク映画の脚本家として活躍する小林政広の監督第2作。白黒画面の会話劇。
ポリスの清司の元妻で、やくざの立夫の元恋人の文子が自殺する。昔からの友人のふたりは連れ立って文子の通夜へと車で向かう。という筋書き自体は特に変わったものではなく、その前に立夫が殺されるシーンが挿入されるのもそんなに目新しいものではない。
でもこの作品はなんかおかしい。北海道っぽい雪道を走っているのに車は練馬ナンバーだし、運転しながらビールを飲んでいたりする。それがどこかで面白くなってくるのかと思わせるが、なかなかそうはならず、おかしなことはおかしなことのまま話は進んでゆく。
話の展開も結局のところ何がテーマなのかよくわからない。一人の女を中心としたふたりの男の関係を描いているのだろうけれど、そこにさまざまな要素が入り込んできて、しかもそれらは微妙にかみ合わない。ちぐはぐな断片がいくつか散在していて、それがつながりあえばどこかで面白くなる予感はするのだが、最後までその断片の間は埋まらず、よくわからないまま終わってゆく。最後の最後はこれがループであるような終わり方をするが、ループだとしたら細部がどんどん合わなくなってくるし、結局お茶を濁しただけとしか思えない。
たびたびタランティーノが言及されるが、確かにタランティーノっぽいスタイルをまねて作品は作られている。だから“海賊版”というタイトルになったのだろうけれど、だからどうしたという感じだ。タランティーノっぽい作品を作ったからなんだと。“海賊版”と言いながらオリジナルをどこかで越えていくような作品ならいいのだが、本当にオリジナルを小規模にしただけの作品ならどうしてわざわざ作る必要があるのか。
この作品のよさは柄本明と椎名桔平のやり取りにある。長い間ともだちであり、同じ女をめぐって複雑な関係にあったという過去、ポリスとやくざという対照的な立場、嗜好の違い、年齢の違い、などなど面白さを感じさせる要素はいろいろある。特に前半はふたりの関係がどうなっていくのかという面白さがあったのだけれど、後半になると他のプロットや展開の突飛さに引きずられてしまい、肝心の部分がおろそかになってしまう感じがする。
最後の最後までこのふたりの関係に的を絞ってほかの事はあくまで小道具という一貫性を持たせれば、もっと集中して見られる作品になったのではないか。