アパートメント
2009/6/8
L'Appartment
1996年,フランス=イタリア=スペイン,111分
- 監督
- ジル・ミモーニ
- 脚本
- ジル・ミモーニ
- ピラール・トマス=ジメネス
- 撮影
- ティエリー・アルボガスト
- 音楽
- ピーター・チェイス
- 出演
- ロマーヌ・ボーランジェ
- ヴァンサン・カッセル
- モニカ・ベルッチ
- サンドリーヌ・キベルラン
- ジャン=フィリップ・エコフェ
商社マンのマックスは東京出張を控えていたが、カフェで昔の恋人の姿を見かける。彼女が電話をしていたボックスでホテルの鍵を見つけた彼は東京行きをやめ、婚約者にも嘘をついてその元恋人のリザを探し始めるが…
パリを舞台に恋愛模様をサスペンスタッチに描いた佳作。ロマーヌ・ボーランジェとモニカ・ベルッチの競演は見ごたえあり。2004年には『ホワイト・ライズ』としてハリウッドでリメイクされた。
1996年ということなので、それなりに古い映画だが、なんだかそれ以上に昔の映画という雰囲気を持つ。その理由は最初はわからないのだが、段々つかめてくる。そして、そのこと自体がこの映画の持つ“味”になもなっている。
映画はヴァンサン・カッセル演じる主人公のマックスが昔の恋人を見かけ、彼女を追いかけるという話だ。その彼女と別れたのは2年前、その2年間彼はニューヨークに行っており、婚約者を連れて帰ってきたのだ。しかし彼はその元恋人のリズが忘れられないらしく、出張もほったらかし、婚約者にも嘘をついてリズを探し始める。
しかし、そこに同じ名前の謎の女性やマックスの親友などが関わってきて、さまざまな謎が浮かび上がってくるという寸法だ。そしてその謎が徐々に明らかになっていくわけだが、その謎がこの作品をサスペンスにする。恋愛物語でありながら、マックスとその周囲の人々の運命は偶然ではなくそれぞれの意図が絡み合った結果のものであり、その意図は隠され謎にされている。その謎が明らかになるにつれ、物語りも進展していくというわけだ。
ということなのだが、この作品全体がヒッチコックのタッチを保っている。舞台装置は90年代のパリそのものなのだが、カメラの使い方やカットのつなぎ方、音楽の使い方に至るまでヒッチコックを髣髴とさせる。ヒッチコックといえばヌーヴェルヴァーグの作家達が崇めたてた映像作家であり、その映画術はフランス映画に大きな影響を残している。そのヒッチコックのタッチを恋愛映画に使ったというのがこの映画のミソで、それが昔っぽくありながら独特の雰囲気を生み出しているといえるだろう。
そのサスペンスは最後までゆるむことなく、余韻も残す。傑作とはいえないが面白い映画であることは間違いない。
もう一つの見所はロマーヌ・ボーランジェとモニカ・ベルッチというふたりの女優の競演だ。ふたりはまったく違いながらどちらも非常に魅力的だ。この違いながらも同じく魅力的であることが物語を面白くし、観客を惹きつける。特にロマーヌ・ボーランジェが投げかける謎は最後まで見るものをひきつけて止まない。
こういう雰囲気の映画というのはなかなかなく、興味深い。