その男ヴァン・ダム
2009/6/15
JCVD
2008年,ベルギー=ルクセンブルク=フランス,96分
- 監督
- マブルク・エル・メクリ
- 脚本
- マブルク・エル・メクリ
- フレデリック・ベネディス
- 撮影
- ピエール=イヴ・バスタール
- 音楽
- ガスト・ワルツィング
- 出演
- ジャン=クロード・ヴァン・ダム
- フランソワ・ダミアン
- ジヌディーヌ・スアレム
- カリム・ベルカドラ
アクション・スターのジャン=クロード・ヴァン・ダムは娘の親権を巡る訴訟に悩まされ、いい出演作にもめぐり合えないでいた。生まれ故郷のベルギーに帰ったヴァン・ダムは郵便局に入る。その郵便局で強盗事件が発生し、警察はヴァン・ダムが犯人だと断定するが…
ジャン=クロード・ヴァン・ダムが自分自身を落ち目のアクションスターとして出演した自虐的コメディ。なかなか面白い発想でもしかしたらヴァン・ダムの新たなキャリアのスタートになるかも?
ジャン=クロード・ヴァン・ダムといったらアクション・スターだが、実際のところそんなに面白かったという映画は記憶にないし、世間の話題をさらうような超大作の主役を張ったこともない。それでも映画ファンなら誰でも知っているスターなわけだけれど、だからこそバカにされもする。
そんなヴァン・ダムが彼自身として落ち目のスターを演じる自虐的コメディとなると、ひねくれた映画ファンならついつい興味を惹かれてしまうところ。しかもそのヴァン・ダムが郵便局強盗の犯人だというのだから、かなりB級色満載という印象だ。
実際はヴァン・ダムが犯人ではなく、強盗事件に巻き込まれただけなのだが、警察は彼を犯人と思い込み世間も騒ぐ。一体どうなっていくのかという展開への興味も引くし、その事件が起きる直前の状況なんかを途中ではさんでいくプロットの組み立て方もなかなかのものだ。
アクションスターであるヴァン・ダムがこれまでの映画で見せてきたアクションで犯人をやっつけるのか、それともやられてしまうのか、あるいはただの情けない男で終わるのか、そんなことをついつい思ってしまう展開がいいのだ。
それにベルギー出身の(そのこと自体知らなかったのだが)スターである彼のスターだからこそのつらさなんてのも描かれていて、市井の人たちの勝手さや映画業界の裏側なんかもちらりと描かれていてアクセントになっている。
そんなこんなでヴァン・ダムの人間臭さを前面に押し出して後半はぐいぐい押していく。そして最後の最後まで展開にゆるみがなく、というよりはいいゆるみ加減でラストになだれ込む。
ただ、警察の側の描き方がありきたりすぎるのが残念なところ。警察内の対立とか無能さなんかを描いているんだけれど、それが中途半端で意味を成していない。しっかりと作りこめばいいアクセントになったような気もするんだけれど、そこまで行かず、なんとなくそんな要素も入れてみたというだけに過ぎなくなってしまっている。
これまでも脚本、監督などいろいろと挑戦してきたヴァン・ダムだが、どれも結局泣かず飛ばずだった。この作品もヒットするわけではなく、映画賞を獲るわけでもないと思うが、けっこう映画マニアやインディペンデント系の製作者なんかには注目されるんじゃないかという感じがする。映画の中でヴァン・ダムは「ベルギーに戻って再出発」なんてことを言っているが、それがこの作品で本当になるかもしれない。
なんてことを思ったり、思わなかったり…