ヤング@ハート
2009/6/27
Young at Heart
2007年,イギリス,108分
- 監督
- スティーヴン・ウォーカー
- 撮影
- エドワード・マリッツ
- 出演
- ドキュメンタリー
コールドプレイやジェームズ・ブラウン、ソニックユースといったロックナンバーを歌う老人ばかりのコーラス隊“ヤング@ハート”、アメリカのみならずヨーロッパでも人気を博す彼らが年に1度のコンサートの向けて準備する7週間を追った。
監督はイギリスで彼らを目にしてすっかり虜になってしまったというスティーヴン・ウォーカー。一生懸命な老人たちがなんとも愛らしい。
ロック(正確にはロック、ポップ、ファンク、パンク、ソウルなどなど何でもあり)を歌う風変わりなコーラス隊の老人たちを描いたというドキュメンタリー。言ってしまえばただそれだけだ。老人がロックというギャップが面白く、それがこのコーラス隊“ヤング@ハート”が人気を博すそもそもの理由でもあり、この映画が発想されたそもそもの理由でもある。
しかし、この映画の面白さはそこにあるのではない。この映画が面白いのは、それがコーラス隊の映画ではなく、コーラス隊に参加している老人たちそれぞれの映画であるところにある。練習風景に加えて彼らの生活をのぞき見ることからわかってくる彼らの人生、多くは語られず、それ自体が物語になることはないけれど、彼らがここに至るまでの経験はさまざまなのに、みんな朗らかで“いい”お年寄りになったということに何か救われる気がする。
もちろん、映像作品としては老人とロックというギャップの面白さを利用して、そのギャップが強調されるような映像を多く使い、ミュージッククリップのようなものまで撮ってしまっている。それはそれで面白く、センスのよさを感じさせるのだが、それだけではないということを繰り返し言いたい。
そもそもそのギャップを利用するだけでは、この映画は「老人を笑う」映画になりかねない。おかしなことをする老人たちのおかしさを笑う。そんな映画になってしまう。彼らにほれ込んだ監督はそれはいやだったろうし、そのためにただおかしいだけではない彼らを切り取り、映画の観客にも伝えたかったのだろう。彼の愛情がそのまま画面から伝わってくる、そんな映画だ。
ただヤング@ハートの老人達自身は自分達が「笑われている」という部分があることをわかっているのだろう。年寄りがロックを歌うというおかしさがまず人をひきつけるのだと理解している。しかしそれでも彼らは人を楽しませることを目指し、プロ意識を持ってコーラスに望む。それは、彼らの活動がまず自分のためでもあるけれど、やはり人々のに中を与えたいという思いに根ざすものでもあるからだ。彼らは自分達でも言っているように残りの人生がそんなに長くないこっとを知っている。でもその中でやれることがあるなら、それをやりたい、そしてそれは人のためになることでありたい。そんな風な思いが彼らの行動からはそれを強く感じられる。
彼らが新曲として散々練習し、映画の最後で疲労されるcanがたくさん出てくる歌(ポインターシスターズの“Yes We Can Can”)はまさに彼ら自身をあらわしている。オリジナルも聞いてみたが、彼らヤング@ハートのバージョンのほうが歌の持つメッセージをよく伝えているようにすら私には聞こえた。
できると信じて人のために何かをする、それが最終的には人生を豊かにするんだ。長い人生を送った彼らが私たちに伝えてくれるのはそんなメッセージだ。