かけひきは、恋のはじまり
2009/7/6
Leatherheads
2008年,アメリカ,113分
- 監督
- ジョージ・クルーニー
- 脚本
- ダンカン・ブラントリー
- リック・ライリー
- 撮影
- ニュートン・トーマス・サイジェル
- 音楽
- ランディ・ニューマン
- 出演
- ジョージ・クルーニー
- レニー・ゼルウィガー
- ジョン・クラシンスキー
- ジョナサン・プライス
- ピーター・ゲレッティ
1925年アメリカ、大学のフットボールは人気が高く、従軍して勲章を受けた経験もあるカーターは時代のスターになっていた。一方でプロフットボールは人気がなく、次々とチームがつぶれていた。ドッジがキャプテンを務めるブルドックスも存亡の危機にあり、ドッジはカーターをプロにスカウトしようと考える…
30年代のスクリューボールコメディのテイストのラブコメ。雰囲気はいい。
20年代を舞台にした30年代風のラブコメ、基本的には30年代に流行したスクリューボール・コメディを現代的な感覚で作りこんだという感じだ。モチーフが黎明期のプロフットボールの世界というのはアメリカ人には馴染み深いのかもしれないが、日本人にはちょっとわかりにくい。日本のプロ野球がその創世記には六大学野球より人気がなかったなんていうのと同じ感覚なのかもしれない。
それはともかく、この30年代の雰囲気というのはなかなかいい。ジョージ・クルーニーもレニー・ゼルウィガーもその昔っぽさにうまくはまっている。30年代といえばもちろん白黒だけれど、その雰囲気をカラーにしたらこんな風になるだろうし、レニー・ゼルウィガーの年増な感じというのもいかにも“美女”っぽくていいのだ。
しかし、この映画がいいのはそこまでという気がしてしまう。プロットはまったくもって平凡だし、展開の仕方も見え見えでまどろっこしい。ヒーローに祭り上げられたカーターが実はヒーローなんかじゃなく、それを暴露するかどうかというのが一つの鍵になっているのだけれど、それがどうしたと思えてしまうし、その結論を引っ張ったところで特に面白いドラマが生まれるわけではない。
私がむしろ面白いと思ったのはCCというエージェントで、プロスポーツの黎明期にはやり手だけれど欲深いエージェントなんてのが登場して引っ掻き回すという辺りは面白いと思ったのだが、その辺りは意外にさらりと流されてしまって膨らまなかったのが残念だった。
まあしかしラブコメなんてそんなものか。スクリューボールコメディだって今見ればすごいと思うけれど、昔は本当にスターを見てちょっと笑ってちょっとわくわくして、そんな娯楽に過ぎなかった。複雑なプロットや示唆深い含蓄なんてものは必ずしも必要ではなかった。
そういう意味ではこの作品はこれでいいのかもしれないとも思う。ただ、監督ジョージ・クルーニーが目指したものはなんだったのかというのがちょっと気になるところだ。わざわざ20年代を舞台に30年代風の劇を撮ったのはただそういう雰囲気が好きだからなのだろうか? 私の勝手な解釈では彼はただそれが好きなのだと思う。そしてそれを今の観客に見て欲しいのだと思う。
それが結局狙いのわかりにくさにつながってしまったようにも思えるのだが、悪い映画ではない。邦題はどうかと思うが、ジョージ・クルーニー主演のラブコメだということを表に出さないと客も来ないだろうから、仕方がないのかな。
いろいろな意味でなかなか微妙な映画だ。