サンシャイン・クリーニング
2009/7/10
Sunshine Cleaning
2008年,アメリカ,92分
- 監督
- クリスティン・ジェフズ
- 脚本
- ミーガン・ホリー
- 撮影
- ジョン・トゥーン
- 出演
- エイミー・アダムス
- エミリー・ブラント
- ジェイソン・スペヴァック
- メアリー・リン・ライスカブ
- クリフトン・コリンズ・Jr
- スティーヴ・ザーン
- アラン・アーキン
ローズはハイスクール時代は学校のアイドルだったが、今はハウスクリーニングで生計を立てるシングルマザー、かつての恋人マックとの不倫関係も清算できない。その妹のノラはどんな仕事も長続きしない。ローズはあるときマックから事件現場の清掃がお金になると聞き、ノラを引き込んでその仕事を始めることに…
裕福ではなくとも魅力的な人々を描いた、哀しくおかしいヒューマンドラマ。
事件現場のクリーニング、さすがに死体はどけられているけれど、血がべっとりと壁についていたり、耐えられない異臭がしたり。そんな現場だからもちろんお金はいい、でもやっぱりそういう仕事をする人ってのは貧しい人たちという印象は否めない。
でも、この作品を見ると、そんなことは忘れてしまう。現場の状況は大変だけれど、仕事は仕事、それがいわゆる“下層”の人がやる仕事だとは彼女たちは思っていない。むしろそこにはドラマがある。ただ家を掃除しているよりも、そんな現場に赴いたほうがやりがいがあるのかもしれない。
ある現場でローラは未亡人となった老婦人に声をかける。突然夫を失ってしまい混乱した老婦人に寄り添い、彼女の気持ちを受け止める。ノラは現場に残っていた写真から故人の娘を探し出す。孤独に変死した人にもいる家族、それは彼女自身が子供のころに失ってしまった母親に寄せる想いにもつながる。
それらは事件現場といういわば現代社会の殺伐として現実を象徴するような場所から、逆に始まる人と人との絆を描いているようだ。
この作品の中心的なテーマは家族である。ノラとローラは母親がただ一度だけ出演した映画が放送され、母の姿を見ることができる日を心待ちにしている。父親のいないオスカーをノラと祖父のジョーは手荒くかわいがる。
しかしこの作品はそんな家族の絆を描いた作品というわけではない。彼らは家族という小さなコミュニティに閉じることなく、その周囲ともつながって行こうとする。彼らがやっていることで本当に価値があるのはそのことなのだ。家族の価値を見直すこととは家族内で仲良くするということではなく、家族が外へとつながっていくための安心できる基地となることを意味するのではないか。
彼らは確かに成功者ではない。社会との間にどこかで違和感を抱え、社会からは変わり者のように見られる。しかしそれは彼らが正直だということだ。社会にあわせ自分の欲求を押し殺すのではなく、貧しくはあっても小さな幸せを手放さない。そんな気持ちを彼らみんながもっているのだろう。
だから彼らは貧しく、いろいろな失敗や不幸に見舞われてもへこたれない。へこみはするけれどまた起き上がってくる。それは成功をつかむためではなく、小さな幸せを手放さないためだ。そんなごく普通の家族の姿に元気付けられる。
勝ち組負け組みとレッテル貼りする社会に飽き飽きしている人は必見。