フォーゲルエート城
2009/7/17
Schlob Vogeloed
1921年,ドイツ,70分
- 監督
- F・W・ムルナウ
- 原作
- ルードルフ・シュトラッツ
- 脚本
- カール・マイヤー
- 撮影
- フリッツ・アルノ・ヴァグナー
- 出演
- アルノルト・コルフ
- ルル・キューザー・コルフ
- ロータル・メーネルト
- パウル・ハルトマン
- パウル・ビルト
狩りのために人々が集まったフォーゲルエート城、しかし雨のためなかなか狩りに出られなかった。そんな中、弟を殺したという疑いのあるエーシェ伯爵が城を訪れる。しかも殺された弟の未亡人も城を訪れる予定になっていた。城には不穏な空気が流れる…
ドイツ・サイレント映画の巨匠F・W・ムルナウがの比較的初期の作品。ストーリーテリングの巧妙さはさすが。
フォーゲルエート上の招かれざる客人エーシュ伯爵は弟を殺したという疑いをもたれている。そしてその弟の未亡人も再婚相手の男爵とともに城を訪れる。その未亡人を訪ねてくるのは元夫の親類にあたるという神父である。彼らに加え、城の城主と他の客人たちが物語の登場人物である。
エーシュ伯爵はいかにも怪しげな人物として登場する。晴れて皆が狩りに行ってもひとり城に残り、大雨が降ってくるとひとり狩りに出かける。そんな中、神父が行方不明となり、エーシュ伯爵にその嫌疑がかかる。
神父はどこに行ったのか、そしてエーシュ伯爵の弟の殺人の真相は、という謎をめぐるサスペンスが展開されてゆく。
ムルナウといえば『吸血鬼ノスフェラトゥ』が有名だが、私としては『最後の人』をサイレント映画の傑作として記憶する。極力インタータイトルを廃したこの作品はサイレント映画の一つの境地であり、音を持たない映像が到達しうる頂点の一つであると今も思う。
ムルナうにそんな印象があるためもあって、この作品のインタータイトル(中間字幕)の量にはちょっとがっかりだった。物語の重要な部分の多くが文字のよって説明され、映像はあくまでその説明に付け加えられたイメージに過ぎないという印象だ。後半に出てくる夢のシーンなども、わざわざ「夢の中」というインタータイトルがでてからシーンが始まる。誰でも見れば夢だとわかるシーンにそんなインタータイトルはいらない。
まあ、それでも登場人物の人物設定が非常にうまくなされているので、物語としては非常にうまく出来ているという印象を持つ。それに登場人物の説明がわざわざされるようなことはないので、何がどうなっているかを頭の中で整理しながら見てゆく必要があり、観ているものを引き込む効果を生んでいる。
そして終盤にはサスペンスが盛り上がりを見せ、ぐっと面白くなっていく。あくまで印象の話だが、インタータイトルも終盤に向けて少なくなっているような気がする。前半は徹底的に説明に使って物語に観客を引き込み、終盤で映画のもつ面白さを見せ付ける。そんな映画なのかもしれない。
まあ前半サイレントの上に少々だれた展開になるので、それを耐えられれば面白かったと見終えることが出来るというところか。