Outfoxed
2009/7/27
Outfoxed
2004年,アメリカ,75分
- 監督
- ロバート・グリーンウォルド
- 撮影
- ジェームズ・カリー
- ウィル・ミラー
- グレン・パーシー
- リチャード・ペレス
- ルーク・リッフル
- ボブ・サリヴァン
- 音楽
- ニコラス・オトゥール
- 出演
- ドキュメンタリー
メディア王ルパート・マードックが所有するケーブルTV局FOX News、そこで放送されるニュースは共和党とブッシュ政権を支持し、民主党を攻撃する内容ばかり。メディアの中立をうたいながら、まったくそれを守ろうとしないFOXの実情を暴く!
FOXによりゆがめられたアメリカのメディアを描いたドキュメンタリー。このドキュメンタリーが逆に一方的な視線となってもいるが、問題提起としてはよい。
要はブッシュ政権と共和党のためにFOXが偏った報道をし、世論を操作しようとしているという話。見るとそれは本当にひどい話だ。偏った報道をするだけならまだしも、番組に人を呼んどいて自分の意見に会わない発言をすると話さないようにさせたり、突然終わりにしてしまったり、人間に対する敬意が感じられない。
そしてそれは基本的に経営陣の支持によるものだというのだから驚きだ。しかし、いくら経営陣が人事権や金を握っているからと言ってまったく自分の意見にあわないことを出来るわけもなく、FOXに集まった人々の多くは共和党支持者であり、ブッシュ支持者であるのだろう。そしてその一部はFOXが育てたわけでもあるのだ。
そんなFOXに操作されてしまうアメリカは不幸だが、その力のあるルパート・マードックというのはやはりすごいという感じも覚える。ただ豪腕と辣腕、力と金だけでこれだけの権力を手にすることは出来ない。やはり彼は魅力的な人物であり、人々を惹きつける何かがあるのだろうという気はする。しかしやり方が強引で強固な保守派だということだ。
この作品を見て感じたことは主にふたつある。1つはこの作品のテーマそのものであるメディアのことであり、放送局や新聞社といった巨大な組織が一元的に大衆に向けて発信するメディアには限界があること、それが中立的で大衆の見方であり続けるのは非常に難しいということだ。日本にもワンマンオーナーが牛耳るメディアがあるが、そういったものはいつでも出現しうるし、その情報が偏っているかどうかは、そこだけを観ていたらわからない。
メディアというのはあくまでも一つの視点から物事を眺めたその結果を大衆に向けて送っているだけであって、それが中立だとか公平だとかいうのはあくまでも理想でしかない。私たち大衆の側ではそのことを常に意識しながら情報を受け取らなければならない。そのためには常にその情報のソースを確認していく必要がある。複数のメディアによって報道されているからと言って、それが真実とは限らないのは、そのソースがもしかしたら一つのデマかもしれないからだ。
現在はソーシャルメディアが発達し、個人と個人の間での情報交換が進んでいるから、そういうデマは広がるのも速ければ収まるのも速くなった。そこにはメディアの未来も見えてくる。
もう一つ感じたのは、マードックも含めて人間というのは不思議なものだということだ。人間というのは人と人との関係の中で自分を変化させていく。それによって思想が固まったり、揺らいだり、そんなことを繰り返す。それは直接的な人との交流にとどまらず、映画やTVや本や新聞や雑誌でも起きる。FOX Newsでもそうだし、この映画でもそうだし、このメルマガでもそう。
となると、あらゆるメディアには必ず少しは対話の相手に影響を与えようという意志が存在するということにもなる。
ということを人はわかっていながらやはり影響される。
うまく説明できないが、それはすごく不思議なことのように思える。
私も公正は心がけていますが、中立には自信がない。