ワンダーラスト
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2009/9/14
Filth and Widsdom
2008年,イギリス,84分
- 監督
- マドンナ
- 脚本
- マドンナ
- ダン・ケイダン
- 撮影
- ティム・モーリス=ジョーンズ
- 出演
- ユージン・ハッツ
- ホリー・ウェストン
- ヴィッキー・マクルア
- リチャード・E・グラント
- エリオット・レヴィ
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ウクライナ移民のAKはミュージシャンを目指し活動中。ルームメイトの一人ホリーはアフリカの子どもたちを救うことを考え、ジュリエットはバレリーナになることを夢見ていた。なかなか夢が叶わない3人だったが、それぞれに奮闘していた…
マドンナが監督に挑戦した青春映画、なかなかエキセントリックな若者達と壊れた社会を描く佳作。
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まず目に付くのは壊れた社会、社会はゆがんだ欲望に満たされ、若者たちはその社会の波に飲まれないよう生きていくだけで必死だ。その欲望にまみれ、波に翻弄されるまま生き延びるのなら容易だが、その荒波の中でどこかにたどり着きたいと思っている場合には、その航海はとてつもなくつらい。
この作品の主人公となるAK、ホリー、ジュリエットはみなその荒波の向こうにある何かを目指している。しかし同時にゆがんだ欲望に飲み込まれ、欲望が拡大するのに手を貸し、あるいは欲望にのっとられそうになっている。
AKはアルバイトでMの人たちに鞭を振るい、ジュリエットはストリップバーの踊り子になる。ホリーは勤めている薬局から薬をくすねてきてはそれを飲む。
そんな彼らを救うのは希望である。AKはミュージシャンになることを目指し、階下に住む盲目の詩人フリン教授が彼の希望になる。ジュリエットはバレリーナになることを夢見、踊り子になってもレッスンに通い続ける。ホリーはアフリカの子どもたちを救うことを夢見、それは思わぬところで果たされる。
つくりはエキセントリックなようだが、見終わって見ると至極まっとうな青春映画。主演のユージン・ハッツが見事にこの映画全体をパンクにしているという印象だ。
このユージン・ハッツの才能にほれ込んだマドンナが彼にアテ書きしたというこの作品、そういう意味では映画の完成像を描くことができるマドンナの才能もまた無視できないものといえるのだろう。
イギリスといえばパンク! パンク精神があれば腐った社会だって乗り切れるし、それを乗り越えて未来へと進んでゆける。そんな希望が持てる作品だ。