ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
2010/8/22
Man Som Hatar Kvinnor
2009年,スウェーデン=デンマーク=ドイツ,153分
- 監督
- ニールス・アルデン・オプレヴ
- 原作
- スティーグ・ラーソン
- 脚本
- ニコライ・アーセル
- ラスマス・ヘイスターバング
- 撮影
- エリック・クレス
- イェンス・フィッシェル
- 音楽
- ヤコブ・グロート
- 出演
- ミカエル・ニクヴィスト
- ノオミ・ラパス
- スヴェン=ベルティル・タウベ
- イングヴァル・ヒルドヴァル
- レナ・エンドレ
社会派記者のミカエルは大物実業家を告発した記事で逆に名誉毀損で訴えられて有罪判決を受ける。大財閥ヴァンゲル・グループの有力者ヘンリックは40年前に失踪した姪のハリエットが一家の誰かに殺されたと信じ、ミカエルにその調査を依頼する。その際にミカエルの身辺調査を依頼されていたハッカーのリスベットは調査終了後もミカエルのことが気になり…
全世界で話題となったスティーグ・ラーソンのベストセラー『ミレニアム』3部作を映画化。複雑な事件を絶妙なストーリーテリングで解き明かす。
主人公となるミカエルの身辺調査を行ったハッカーのリスベットがどのように関わってくるのか、そこでまずぐっとこの物語につかまれた。そして、ミカエルとリスベットの調査の対象であるハリエットの謎を調べるうちに浮かび上がってくる連続殺人事件、その事件を解き明かしていく段になってスピード感も上がり、どんどん引き込まれていく。
関係者が非常に多いし、情報があまりに少ないので犯人を当て推量するところまで行かず、ただただ2人の調査を追いかけ、一つ一つの事件に衝撃を受け、リスベットの類まれな納涼に舌を巻くばかりなのは「謎解き」を楽しみにするミステリーファンには物足りないかも知れないが、リスベットの不思議な魅力は、観ている者に推理をさせるよりも彼女の行動を見守ることのほうに面白みを見出させる。
そこには、事件とは無関係のリスベットの現在と過去も深く関わってくる。北欧らしい暗さもあり、極端な外見をした彼女の内面にある深淵を説得力のあるものにもしていて、物語に深みを持たせるものだ。
この物語の中心は間違いなくリスベットだが、展開させているのはミカエルである。ミカエルは謎とリスベットを媒介し、リスベットの導き手でもある。重たい過去と現在を抱えたリスベットがミカエルを解して現実と関わっていくその過程もこの映画の魅力的となっている。
リスベットがなぜ魅力的なのかを少し分析してみると、一番の要素は彼女の行動は予想がつきづらい、あるいは予想の上を行くということだろう。彼女に便宜を図る見返りに性的なサービスを要求する後見人に対する行動などがその典型例だが、彼女の行動は唐突で突飛で痛快だ。しかも彼女はとてつもなく頭がよく、その突飛な行動にもしっかりとした(彼女なりの)裏づけがあり、行動が取られたあとで、見ている人にもその理由が理解できるようになるのだ。
そして、その彼女の外見が徹底的に反社会的であることも重要だ。彼女はそのことによってヒーローとなり、同時に一切の偏見を持たないミカエルとの関係が特別なものになるのだ。はっきり言ってこの作品の成功はリスベットというキャラクターが創造されたその一点によると思う。
しかし、もしかしたら彼女のようなキャラクターを受け容れ難いと考える人もいるのかもしれない。だとすると、この映画は原作が書かれた北欧で作られてよかった。もしハリウッドで作られたら彼女の棘は丸められ、魅力は激減してしまっただろう。
要するにリスベットはパンクなのだと思う。映画でも3部作はすでに完成し、公開されている。早く次が観たい!