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ミックマック

ミックマック

はみ出し者と不気味てカワイイもの、イタズラと兵器と平和と。
★★★.5-

2010/9/17
Micmacs a Tire-Larigot
2009年,フランス,105分

監督
ジャン=ピエール・ジュネ
脚本
ジャン=ピエール・ジュネ
ギョーム・ローラン
撮影
テツオ・ナガタ
音楽
ラファエル・ボー
出演
ダニー・ブーン
アンドレ・デュソリエ
ドミニク・ピノン
ジュリー・フェリエ
ヨランド・モロー
preview
 幼い頃、父親を地雷で亡くし孤児院に入ることになったバジルはその孤児院を抜け出す。その30年後、レンタルビデオ店の店員になった彼は流れ弾を頭に受けてしまう。一命は取り留めたが銃弾は頭に残ったまま、仕事も家も失って途方にくれる彼を助けたのは廃品を回収しながら共同生活を送るおかしな集団だった。そこで暮すようになったある日、バジルは父親を殺した地雷と自分の頭に残る銃弾を製造した会社を見つけ、復讐をもくろむ…
  『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督による不気味でおかしなファンタジー・コメディ。
review
ミックマック
2009 ©EPITHETE FILMS –TAPIOCA FILMS –WARNER BROS. PICTURES –FRANCE 2 CINEMA -FRANCE 3 CINEMA

 この映画の一番の面白さはなんと言ってもバジルが仲間になるおかしな集団の人たち。冷蔵庫の野菜室に入ってしまう“軟体女”を筆頭に一芸に秀でてはいるんだけれど社会的には不適合といわざるを得ない人々が集まっている。はみ出しものの彼らが権力の権化ともいえる巨大兵器メーカーと戦うわけだが、はみ出しものは結局はみ出し物で、真正面からは戦わない。そのアイデアや失敗のくり返しが面白い。

 そして、このはみ出し者たちの「不気味さ」がこの映画を他から際立たせている。ジャン=ピエール・ジュネといえばいまや『アメリ』の印象があまりに強いが、そもそもは『デリカテッセン』のようなグロテスクというか不気味なものを描いてきた映画監督である。この作品はそんな不気味さが再び前面に出てきたもののように見える。

 典型的なのはバジルが最初に隠れ家に迎えられたときに披露される仲間の一人“発明家”プチ・ピエールの発明品たち。それは自動で動く人形のようなおもちゃなのだが、それがかわいいけれどどこか不気味。廃品で作ったために新品の工業製品とは違ったいびつさがあり、それがなんともいえない気味の悪さを演出しているのだ。

 このいびつさや不気味さというのは、彼らが作るモノだけでなく、彼ら自身を示してもいる。彼らはいわば社会から捨てられた廃品、そんな彼らは社会に容易に適合できる「既製品」の人々から見れば不気味な人たちに違いないし、「普通な」私たち観客から見てもそう見える。しかし、それを彼らは逆手にとって自由な発想で「まっとうな」人たちの鼻を明かしていく。それが、不気味だけれど愛らしく見えてしまう彼らの秘密だ。

 そして同時にその不気味さと愛らしさの共存が「笑い」にもつながる。彼らの行動はいわゆる「常識」からはずれていて、そのズレが笑いを誘う。爆笑というわけではないけれど、「ははは」と声を上げて笑うシーンはいくつもあった。

 決してコメディではないけれど、笑いはあり、笑う門には福来るというくらいでなんだか幸せな気分にもなる映画。このあくの強いビジュアルは本来であれば好みの分かれるところであるはずだが、『アメリ』でジャン=ポール・ジュネの世界観は広く受け入れられているので、それが映画を楽しむ障害になるとは思えない。

 でもやっぱり何かこういう不気味なものというのは生理的に受け付けないという人もいると思う。彼の映画はそれくらい限られた観衆に向けられたものでいいのだと思う。万人に受けるものにろくなものはない。

ミックマック ミックマック
2009 ©EPITHETE FILMS –TAPIOCA FILMS –WARNER BROS. PICTURES –FRANCE 2 CINEMA -FRANCE 3 CINEMA
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: フランス

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