
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士





2010/9/19
Luftslottet som Sprangdes
2009年,スウェーデン=デンマーク=ドイツ,148分
- 監督
- ダニエル・アルフレッドソン
- 原作
- スティーグ・ラーソン
- 脚本
- ウルフ・リューベリ
- 撮影
- ペーテル・モクロシンスキー
- 音楽
- ヤコブ・グロート
- 出演
- ミカエル・ニクヴィスト
- ノオミ・ラパス
- アニカ・ハリン
- レナ・エンドレ
- アンデシュ・アルボム・ローゼンダール
- ミカエル・スプレイツ

リスベットは謎の人物ザラを追いつめ、重傷を負いながらもザラにも品詞の重傷を負わせる。しかしザラをスパイとして利用してきた組織は自分たちの悪事の発覚を恐れ、ザラを亡き者にしようと目論む。しかしその計画は失敗し、今度は彼女を精神病と認定して裁判を有利に運ぼうとするが…
スウェーデンのベストセラー「ミレニアム」3部作を映画化した3部作の完結編。舞台は法廷へと移り、そこでもリスベットの驚くべき力が発揮される。


© Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009
第1作ではリスベットのハッカーとしての驚くべき能力が発揮され、第2作ではその行動力が事件を解決へと向かわせた。そして、この第3作では彼女の精神力と忍耐力が発揮される。
ここでメインになるのは法廷での戦いである。重傷を負い行動の自由を奪われたリスベットは親切な医師の協力を得て病院で保護され、同時に自伝を書くことも許される。この自伝をもとにミカエルが彼女の過去について調査を行い、彼女を亡き者にしようとしている巨大な組織を追い詰めていくのだ。
したがって映画の中盤まではミカエルが物語の中心となる。第2作ではあまり活躍の場がなかったので、ここで面目躍如、第1作の行動力を取り戻し、次々と謎を解決していく。その部分はやはりミステリーとしての王道という面白さがある。
しかし、やはりこのシリーズをシリーズたらしめているのはリスベットの存在である。それが如実に現れるのは、彼女がはじめて裁判に臨むシーンである。彼女は留置所で念入りにメイクを施し、きっちりと第1作で見せた“ブラックメタル”の格好に身を包む。それは外見という点で彼女を反社会的で、非常識に見せるものであるにもかかわらず、毎回きっちりとその格好をするのである。
そして、それこそが彼女の抵抗の唯一の手段なのである。彼女はそんな格好をしているにもかかわらず首尾一貫して正常で常識のある証言を続ける。そのことは外見というのは中身を正確に反映するものではないということを証明する。反社会的で犯罪者であるかのように見える彼女こそがまじめで、まっとうな精神科医やまっとうな役人に見える奴らこそが犯罪者なのだというメッセージを強烈に送っているのだ。
その彼女のパンクさにしびれる。映画的には映像的にもプロット的にも3作の中で一番地味だと思うが、それとは裏腹にどんどん引き込まれていく。最後に大団円がくるだろうという予測もそのように物語を盛り上げるようそのひとつになっているとは思うが、それでもよくできた物語だと思う。
この3部作はそれぞれに特長に違いがあり、それぞれに良さがある。まあ3部作の第2作はつなぎ的な物語になりがちで、このシリーズでもその面は否めないが、第2作はアクションを前面に押し出すことでまた違う面白さを引き出していた。
3部作をひとつの物語としてみたときのストーリーの面白さはさすがに全世界でベストセラーになっただけのことはある。シリーズを観てきた人はもちろん必見だし、観てない人はぜひとも1から一気見して欲しい。


©Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009