渇き
2010/9/27
Bakjwi
2009年,韓国,133分
- 監督
- パク・チャヌク
- 原案
- エミール・ゾラ
- 脚本
- パク・チャヌク
- チョン・ソギョン
- 撮影
- チョン・ジョンフン
- 音楽
- チョ・ヨンウク
- 出演
- ソン・ガンホ
- キム・オクビン
- シン・ハギュン
- キム・ヘスク
- オ・ダルス
- パク・イナン
病院で最後の秘蹟を行うことに飽き足らなくなった神父のサンヒョンは、EVウィルスというウィルスのワクチン開発に協力するため、アフリカの研究所へと赴く。そこで50人の被験者の中で唯一生き残ったサンヒョンは奇跡の神父と崇められるが、人間の血を摂取しないとウィルスの活動を抑えられなくなっていた…
韓国の鬼才パク・チャヌクがバンパイアとなった神父を主人公にラブストーリーを撮った。強烈なインパクトではまる人ははまる。
人のためになろうと新種のウィルスのワクチンのための被験者となった神父がなぜかバンパイアになってしまう。最初は意識不明の患者から血をもらっていたが、なかなかそれだけで済むわけも行かず、さらには性欲のほうも沸いてきて、偶然再会した旧知の一家の人妻テジュとの不倫に没頭していく。
神父なので、そこにはさまざまな葛藤があってそれが物語を展開していくことになるのだけれど、途中からはそんなことはなんだかどうでもよくなって、とにかく血と性への欲望だけに突き動かされていくようになる。神父として人を殺すことだけは回避していたのが…
というように物語がなんだか訳わからなくなっていくのだが、むしろわけがわからなくなってしまった後のほうが面白くて、問題なのは葛藤やら何やらでごちゃごちゃしているあたり、この辺がすっきりせず、全体の長さが長いこともあって中だるみな感じがしてしまう。
それを除けばかなり面白い映画だと思う。が、見る人はかなり選ぶ。まあ何が凄いって、流れる血の量が凄く、だからおのずと残虐シーンも多くなる。とは言ってもそれほど生々しくはないんだけれど、ホラー映画に拒否反応を示す人はまず無理だろう。もちろんセックスシーンもふんだんにあるので、要はエロとグロがそろった映画ということになって、そこでかなり見る人は限られていく。
しかし、吸血鬼ものというのはどうしても血と性から逃れることはできない。そして、なぜかそれがエログロではなくミステリアスだったりセクシーだったりという方向に向かうのが吸血鬼もののミステリーである。この映画もどう考えてもエログロなのに、どこかセクシーで耽美的であるともいいたくなるような雰囲気をも持っている。
特に“テジュさん”を演じたキム・オクビンの不思議な魅力が光っている。登場から不機嫌な顔をしながらも、そこにセクシーさをにおわせる彼女は物語が進むにつれてどんどんエキセントリックに、しかしよりセクシーになっていく。破壊的で性的なミューズ、物語の行く末にそんな存在を誕生させたというだけでこの映画はすごいと思う。
と、個人的にはかなり褒めたくなる映画なわけだが、やはりどうしてもこのパク・チャヌクの変態的なアクの強さは気になるわけで、「とりあえず怖いもの観たさで観てみて!」という風にしか勧められない感じなのだ。やはりこの監督は只者ではない。