ボーイズ・オン・ザ・ラン
2010/10/4
2009年,日本,114分
- 監督
- 三浦大輔
- 原作
- 花沢健吾
- 脚本
- 三浦大輔
- 撮影
- 木村信也
- 音楽
- 桜井芳樹
- 出演
- 峯田和伸
- 黒川芽以
- 松田龍平
- YOU
- リリー・フランキー
- 小林薫
ガチャガチャメーカーに勤める田西は同じ会社のちはるに想いを寄せ、ちはるもまんざらでもないらしい。ある日、ライバル会社の青山にその話をしたところ飲み会をすることになり、ちはるとの距離が急接近するが…
花沢健吾の同名漫画の映画化、銀杏BOYZの峯田和伸はいつも役者としていい味を出す。
30歳のもてない男が始めての恋にどぎまぎするという話。銀杏BOYZの峯田和伸は『アイデン&ティティ』で映画初主演し、その後も次々と映画に出演し、役者としての才能をみせている。それだけ引っ張りだこになるだけに、流石に存在感があるというか、独特のキャラクターである。見た目は本当に野暮ったい鈍そうな男なのだが、切れたら瞬発力があるという感じ。本人が本当にそうなのかどうかはわからないけれど、映画ではそういうキャラクターが際立つ。そして、バンドのボーカルだから当たり前といえば当たり前だが歌のパンチ力が半端ない。
そして、ライバル会社のいやな奴を演じた松田龍平も見事にいやな奴。「本当にこんな奴いたらいやだなぁ」とすべての男が思うそんな男を見事に演じた。
そんな2人に、リリー・フランキー、小林薫という味わい深い脇役を加えているにもかかわらず、この映画はあまり面白くない。
あまり面白くない理由は色々あるが、一番大きいのは登場人物の心理がいまいちつかみがたいということだろう。まあ、人間の心理なんてものはつかみがたいのが真実だけれど、ここはドラマ、三十路も近いおくての男の心理を描いたドラマなんだから、その心理がつかみ取れなければ話にならない。
特にヒロインのちはるの心理はまったくつかみ所がない。田西がつかみ所のないちはるに翻弄されるところを描くのが狙いなのだとしても、観客には田西の想いとちはるの想いのズレが見えないと、そこにドラマは生まれないのではないか。
この話は結局のところ、女心がわからないダメ男が結局女に振り回され、モテ男にバカにされ、もてない男だけのコミュニティに救われるというだけの話だ。そんな話じゃいくら登場人物たちが魅力的でも楽しめない。
それ以外に、細かい部分でも映画に乗っていけない要因も色々ある。たとえば、結婚披露宴の会場が余りに安っぽいとか、喧嘩の場所が突然砂場とか。あるいは逆に面白くなるようそのはずなのに、その面白さが伝わってこない要素というのもある。たとえば、ラブホテルの部屋がいきなりSM仕様だったりとか。他にもわかり安すぎる暗喩というのも興ざめの要因だ。「人のものを見るとおいしそうに見える」なんていうセリフは言い古されている上に、それがほのめかす意味が明確すぎてまったく効果的ではないように思える。
そんなこんなでなんだが全体的にギクシャクとした印象があって、タイトルの割には疾走感を感じられないのが残念だった。まあ、峯田和伸をはじめとする役者を見る価値はあるが。