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サバイバル・オブ・ザ・デッド

ロメロのゾンビ映画を侮るなかれ、残虐で哲学的な死者の祭典。
★★★.5-

2010/10/6
Survival of the Dead
2009年,アメリカ=カナダ,90分

監督
ジョージ・A・ロメロ
脚本
ジョージ・A・ロメロ
撮影
アダム・スウィカ
音楽
ロバート・カーリ
出演
アラン・ヴァン・スプラング
ケネス・ウェルシュ
キャスリーン・マンロー
デヴォン・ボスティック
リチャード・フランツパトリック
preview
 よみがえった死人が人を襲うようになってしばらく後、とある島ではゾンビをすぐに殺す勢力と、鎖につないで生かしておこうという勢力が対立し、一方の勢力が島を出ていくことに。一方、数人の州兵を率いて強盗まがいのことをしていたサージは“安全な島”の噂を聞き、そこに向かうが…
  ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロがあいも変わらずゾンビ映画を。でもやっぱり面白い。
review

 ロメロといえばゾンビ、ゾンビといえばロメロ。もはやいったい何作品ゾンビ映画を撮ったのかわからないジョージ・A・ロメロがまたゾンビ映画を撮った。今回はすでにゾンビが出現している世界で、ゾンビを殺し、強盗などを働きながら旅するサージ率いる元州兵のチームが中心になり、そこにもうひとつゾンビを巡って人々が対立した島の話が登場する。

 面白いのはこの島の話で、この島は昔から2つの家族が対立する島で、今回もゾンビを巡って2家族が対立、ゾンビになったらすぐに殺してまわっていたオーフリン家の家長パトリックが島を追放される。そんなパトリックがサージと出会って再び島へ戻るというもの。

 で、ゾンビを生かしておく派(まあすでに死んで入るんだけれど)の考えというのが、ゾンビを調教して人を食べないようにしつければ家畜として使えるというものなのだ。なんともビックリ。そして、今回のゾンビは生前にやっていたことを反復するという修正があるらしい。郵便配達は郵便受けにくくりつけられて郵便を配達し続け、パトリックの娘ジェーンは馬に乗り続ける。

 そんなゾンビだからはっきり言ってほとんど怖くない。力だけは強いようだけれど、動作がのろいので銃で頭を撃ってしまえば簡単に死ぬし、島という限られた場所ではそんなに人数も多くないので、大挙して押し寄せてくるといういつもの恐怖感はない。

 この映画で怖いのはゾンビよりむしろ人間。ゾンビが現れたことで人間同士の殺し合いがエスカレートし、それがさらにゾンビを増やす結果を招いているようだ。

 ロメロの映画はいつもそうだが、この映画もなんだかもやもやする。ホラー映画なんてのは基本的に善と悪がはっきりしているものだが、ロメロの映画は何が善で何が悪なのか判然としない。

 でも私はそこが好きだ。世の中に善か悪かがはっきりとしている問題なんてない。そんな中でゾンビが現れる。ゾンビは人をかみ殺しゾンビにしてしまうという意味で把握だが、この作品で繰り返し問われるようにもしそのゾンビが愛する人だったら、もう一度その人を殺せるだろうか? そこには善や悪を超越した問題があるのではないか? ロメロはそんなことを私たちに問いかける。しかもこの作品は勧善懲悪を是とする西部劇をパロディ化したものでもある。

 これはまさに、ゾンビというホラーの要素を使って、善悪二元論をチャカしたロメロらしい作品! 序盤と終盤に残虐シーンを盛り込むことでまっとうな映画であることを拒否するのもロメロらしい!やっぱロメロは最高です。

 ところで、この映画の序盤に登場するシークエンスは前作の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』からのものらしい。前作は未見だが、サージらの部隊が脇役として登場しているということなのだ。ロメロのゾンビ映画は基本的にそれぞれが独立した作品だけれど、どこかでつながっていることも多い。いつか、まとめて一気に見てみたいなんてことを思わせる作品でもあった。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: カナダ

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