ずっとあなたを愛してる
2010/10/9
Il y a Longtemps que je t'Aime
2008年,フランス,117分
- 監督
- フィリップ・クローデル
- 脚本
- フィリップ・クローデル
- 撮影
- ジェローム・アルメーラ
- 音楽
- ジャン=ルイ・オベール
- 出演
- クリスティン・スコット・トーマス
- エルザ・ジルベルスタイン
- セルジュ・アザナヴィシウス
- ロラン・グレヴィル
- ジャン=クロード・アルノー
空港でぎこちなく抱き合う2人の女性、実は十数年ぶりに再開した姉妹で、妹のレアが姉のジュリエットを自宅に迎える。しばらくレアの家に滞在することになったジュリエットは実は刑務所を出所してきたばかり、レアの要旨の姉妹にはそのことを明かさず、ジュリエットは仕事を探し始めるが…
フランスの人気小説家フィリップ・クローデルが脚本・監督に挑戦した人間ドラマ。フランス映画らしいフランス映画。
妹レアの家に居候することになったジュリエットは長い間刑務所に入っていたらしい。しかし、その理由は最初は明らかになっておらず、まずはその理由が何だったのかということ、そして彼女が刑務所にいたということが周囲にばれないかどうかということが物語の中心になる。
そして、中盤でその理由が明らかになると、どうしてそのような事件を起こしたのか、そしてそんなジュリエットを周囲が受け入れることができるのかが焦点になっていく。
この映画の面白いところは、描かれているのはほとんどがジュリエットに対する周囲の反応であり、ジュリエットはほとんどしゃべることもないにもかかわらず物語の中心にあるのはジュリエットの心の葛藤であるという点だ。ジュリエットの心のうちは誰にも分からず、観客にも分からない。
しかし、そのジュリエットとてただ心を閉ざしているわけではない。彼女が他人と打ち解けようとしないのは、刑務所にいたことを知られたくないという理由ではなく、他人との交流の中で自分の心の傷に触れられることを怖れているから名のだということが徐々に分かってくる。そんなジュリエットの心のありようがどう変わっていくのか、そこがやはりこの映画の眼目だ。
そして、その過程にはいかにもフランス映画らしい要素があふれる。友人同士が集まった時には議論が始まる。ここではロメールが取りざたされるが、こんなシーンはロメールの映画でたびたび見られるシーンだ。あるいは、年齢に関係なく恋愛やセックスが話題になるという点、ジュリエットはおそらく40代後半というところだろうが、ごくごく自然に恋愛をし、セックスもする。さらには、家族や友人の中に様ザな人種がいるというのも最近のフランス映画に多く見られる傾向だ。
映画の終盤はちょっとベタというか、「こうなるんだろうなぁ」という予想通りの展開になって、フランス映画らしいひねりがないのはちょっと意外というか残念だったが、その分わかりやすく、エンターテインメント性に富んだ作品になったと思う。
監督がもともと小説家なので、小説よりもむしろ哲学に近いとすら感じる典型的なヌーヴェル・ヴァーグの作品よりはわかりやすいものになったということなのかもしれない。フランス映画の「重さ」を求める人にはちょっと物足りないかも知れないが、まあこれはこれでいいのではないだろうか。