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ゼフィール

素朴だが閉された田舎の村の奇妙で美しい映像詩
★★.5--

2010/10/22
Zefir
2010年,トルコ,96分

監督
ベルマ・バシュ
脚本
ベルマ・バシュ
撮影
メフメット・Y・ゼンギン
出演
シェイマ・ウズンラル
ヴァヒーデ・ギョルドゥム
セヴィンチ・バシュ
O・リュシュテュ・バシュ
ファトマ・ウズンラル
preview
 トルコの山奥に祖父母と暮らす少女ゼフィールは長く留守にしている母親の帰りを今か今かと待ちわびている。そんな中、友達と近所の牛の番をしていたところ、その牛を行方不明にさせてしまうがふたりは白を切りとおす。そしてある日、母親がひょっこりと現れる…
  トルコの豊かな自然を舞台にそこで生きる少女の日常を描いた素朴だがどこか新鮮な映像詩。
review

 非常に淡々とした映画だ。トルコの山奥の家が数件しかないような集落に暮らす少女ゼフィールの日常をただ追う。ゼフィールは母の帰りを待つだけで変わらぬ毎日が過ぎていく。事件といえば近所の牛を行方不明にしてしまったことくらいだが、その事件も特に大騒ぎされるわけでもなく、むしろ日常に埋没していく。後は、村の祭りなども行われるが、それとて特に大きな波紋を呼ぶわけではない。

 この映画の魅力がその淡々とした物語を彩る映像であることは間違いない。緑深い森の景色、川、崖、霧、草花、キノコ、動物の死骸、それらが深くて豊かな自然を形作り、ゼフィールと家族を包み込む。それは安心感を与える風景だ。

 しかし、同時にその世界は奇妙でもある。その自然に囲まれた彼女の村は完全に閉ざされた世界だ。外部との交流はほとんどなく、唯一の機会が村の祭りだといってもよさそうだ。若い親たちは出稼ぎに出るという事実が語られ、彼らが祭りの機会に帰ってきているようだが、そこに外の世界との交流は生まれない。

 そんな中、ゼフィールの母は完全に村の外の人間として村に帰ってくる。母はほとんど村の人たちと交流することはなく、家族と森を歩くことしかしない。彼女はあくまでも村にとって異質な存在であるのだ。ゼフィールはそんな母親とずっと暮らしてきた村の間で引き裂かれる。気持ちは母親と一緒にいたいと思うのだが、彼女の世界は村にあり、そこを離れることは完全に新たな世界へと踏み出すことを意味するからだ。

 ラストは衝撃的だ。でも、その村とゼフィールの独特の世界観からすると、なぜか納得できてもしまう。そんなことありえないと私たちの世界の常識からは思う。けれども、それがありえる世界がある。その世界観のずれというのを感じることできるのがこの映画の面白さなのかもしれない。

Database参照
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監督順: 
国別・年順: トルコ

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