
小学校!





2010/10/24
Primaria!
2010年,スペイン,107分
- 監督
- イバン・ノエル
- 脚本
- イバン・ノエル
- フランシスコ・アルフォンシン
- 撮影
- アルビ・リオス・バルバ
- 音楽
- イバン・ノエル
- 出演
- フランシスコ・アルフォンシン
- ホセ・ホアキン・メナ=ベルナル・ルエダ

大学で学科長を務めたこともある美術教師ホセ・マリアが小学校の教壇立つことに。すぐに集中力をなくし騒ぐ子どもたちや風変わりな教師たちに最初は悩まされるが、少しずつ子どもたちとのコミュニケーションもうまくいくようになり、ホセ・マリアもさまざまなことを学んでいく。
自身も現役の教師であるイバン・ノエルがともに成長していく教師と生徒を描いたヒューマン・ドラマ。

この映画の物語の軸はもちろんホセ・マリアが小学校の教師として体験していく出来事であり、その中心には多動症の生徒ホセ・ホアキンとの関係がある。ホセ・マリアはこのホセ・ホアキンや他の生徒の言葉や作品から今まで創造もしなかったようなさまざまなことを学ぶ。そしてそれに答えるかのようにホセ・ホアキンはホセ・マリアの授業で作品作りに向かっているときにはいつもの問題児っぷりがすっかり影を潜めるのだ。
このプロットが映画を引っ張っていくわけだが、それ意外にもさまざまな小さな物語が展開され、それが「小学校」を構成する要素となっていく。それらは別の物語であるのだけれど、小学校という共通項によって統合されて、ひとつの物語になっていくのだ。
魔女的な教師が何かに悩み、ひどい授業をしていること。生徒が授業中にオナニーをしていると言ってやたらと心配する女教師。世の中には本当にいろいろな人がいる。それは小学生でも学校の先生でも同じだ。校長のように何かを管理する立場だと、その飛びぬけた「個性」を排除しようという方向に動かざるを得ないが、この映画が言おうとしているのはその「個性」をもっと楽しんでしまおうじゃないかということだ。
タイトルが『小学校!』であるだけに、この映画はまさしく小学校というものを複眼的に描いた物語である。一応の主人公はホセ・マリアだが、本当の主人公は小学校そのものであり、その中にホセ・マリアもホセ・ホアキンも他の教師たちも含まれる。
そのような映画のあり方がこの映画をドキュメンタリー的に見えるものにしている。映像の作りもドキュメンタリー的なものを意識しているのだと思うが、それにもましてひとつの物語に焦点を当てないというところがたぶんにドキュメンタリー的なのだ。そして、このドキュメンタリー的な作風はこの作品にぴたりとくるしいい表現方法だと思う。
なんというか、小学校という箱の中につまったさまざまな想いが映画に表現されているという感じ。感動したり笑ったりするわけではないのだけれど、なんとも不思議な魅力にあふれた映画だ。それはおそらくしっかりと「人間」が描かれているからだろう。