オープン・ユア・アイズ
2003/8/10
Abre Los Ojos
1997年,スペイン,117分
- 監督
- アレハンドロ・アメナバール
- 脚本
- アレハンドロ・アメナバール
- マテオ・ヒル
- 撮影
- ハンス・バーマン
- 音楽
- アレハンドロ・アメナバール
- マリアーノ・マリン
- 出演
- エドゥアルド・ノリエガ
- ペネロペ・クルス
- ナイワ・イムリ
誰もいない街で目覚める夢を見た青年セサル。遺産として会社を相続し、何不自由ない生活を送る色男の彼は、自分の誕生パーティーに親友が連れてきた女性ソフィアに声をかける。そして、彼女を家まで送り、その家で彼は運命的なものを感じる。そして、何もしないまま朝を迎え、彼女の家を出た彼を待っていたのは…
スペイン産の本格的サスペンス。スペイン時代のペネロペ・クルスの代表作の一つで、トム・クルーズがリメイク権を買い、『バニラ・スカイ』としてリメイク。ペネロペはリメイク版にも同じ役で出演している。
先に『バニラ・スカイ』を見てしまい、しかも映画がリメイクというよりは全く同じ映画を場所と人を代えて撮っただけという印象なので、結末がわからないサスペンスとしてのドキドキ感はすっかりなく、あまり楽しめないということはありますが、冷静に映画を見ることができたということもあります。
どうしても考えてしまうのは『バニラ・スカイ』との違いということで、物語についての解説は『バニラ・スカイ』に譲るとして、いろいろと違いを見てみましょう。同じなのは物語とペネロペ・クルスで、でもペネロペ・クルスはちょっと違う。たぶん鼻が違う。5年分の違いをほんの1週間かそこらで見てしまうのはなんだか悪いような気もしますが、それもスターの宿命、きれいになってるんだからいいじゃないか、と思います。ハリウッドスターの「鼻」といえば、オーストラリア出身のニコール・キッドマンをまず思いだしますが(アカデミー賞でネタにされていたくらいだから、秘密ですらない)、同じくアメリカ以外からスターダムにのし上がり、トム・クルーズといい仲になった(言葉が古い…)ものどうし、鼻整形もお揃いとは、これは果たして偶然の一致なのか? などと考えてしまいました。
まあ、そういうゴシップ的なものはおいておくとして、この映画のほうが全体的には『バニラ・スカイ』よりも質が高い。同じ物語であっても、こちらの映画のほうが物語の展開の仕方にセンスが感じられるし、セリフの使い方にも気が利いている。物語も同じと入っても、全く同じではなく、なかなか重要な部分でも多少の違いがあるのですが、何処が違うのかを書くと両方の映画にとってネタばれになってしまうので、やめておきまして、ヒントはCMとだけ書いておきましょう。
『バニラ・スカイ』のほうが上といえるのはキャメロン・ディアスの存在感。キャメロン・ディアスとペネロペ・クルスという対比はとても絵になるし、違いが際立つわけですが、こちらのオリジナルのほうでは、なんだか今ひとつピリッとしないという印象がありました。あとは、さまざまな技術的なものはやはりハリウッドのほうが数段上、特殊メイクとか、小道具の作り方とか、やはり財力の違いがものをいうのか、力の差が感じられました。
しかし、やはりこの『オープン・ユア・アイズ』(なぜ邦題を英語にしたのか理解に苦しみますが)がオリジナルなわけで、脚本・監督・音楽とこなしたアメナバール魂が入っている。泥臭いけれど面白い。まず、最初にセサルが親友(名前は忘れてしまいました)と会話するシーンのセリフのひとつひとつに意味が込められているという気がしました。
それに対して『バニラ・スカイ』のほうはスリルとサスペンスさえあれば他には何もいらないという、いい意味でも悪い意味でも徹底的にハリウッドな映画であるのだという違いを感じたのでした。
というわけなので、どちらか見るならこの『オープン・ユア・アイズ』を。ただ、トム・クルーズかキャメロン・ディアスのファンなら『バニラ・スカイ』を。あるいは、疲れているときにも『バニラ・スカイ』を。