ジーン・セバーグ:アメリカン・アクトレス
2004/1/23
American Actress
1995年,スイス=ドイツ,82分
- 監督
- ドナテロ・デゥビニ
- フォスコ・デゥビニ
- 出演
- ジーン・セバーグ
- フランソワ・モレル
- ラウール・クタール
1979年8月、行方不明になっていたジーン・セバーグは自宅の近くに止められた車の中で冷たくなって発見された。その彼女の死の謎に迫るべく、生い立ちから死までを女優としての活躍から私生活まで、関係する人々のインタビューを集めて追ったドキュメンタリー。
『勝手にしやがれ』でしられるジーン・セバーグは17歳のとき『聖女ジャンヌ』のオーディションで女優となったが、その女優としてのキャリアは決して順風満帆といえるものではなかった。そして3度の結婚、ブラック・パンサーとの関係などもあって、彼女は徐々に追い詰められていく…
『ジーン・セバーグの日記』は彼女自身が語るというフィクションの形をとった伝記映画だった。それは女優としてのジーン・セバーグ、女としてのジーン・セバーグが描かれていた。
この『アメリカン・アクトレス』は彼女の生涯を追いつつ、彼女の身近にいた人たちにインタビューをして、彼女の実像を明らかにしようとしている。2番目の夫のロマン・ギャリ、隣人、『勝手にしやがれ』のカメラマンであるラウール・クタールなどなど。彼らの証言はまさに彼女の知られざる面を明らかにしていく。
そして、この映画で重要視されるのは男たちの存在と、ブラック・パンサーとのかかわりである。ジーン・セバーグがブラック・パンサーとかかわっていたことはかなり有名な話のようだが、この作品ではFBIの文書を手に入れて、FBIがジーン・セバーグを監視していた事実をつまびらかにする。そして、FBIによって踏みにじられた彼女の人生を。
これはドキュメンタリーであるが、一種のミステリーである。そしてサスペンスである。だから、細かいことは明かさないほうがいいだろう。ジーン・セバーグの人生はすごい。事実は小説より奇なり。一本のスパイ映画よりもこの映画のほうがスリルがあるかもしれない。
そのようにしてジーン・セバーグの人生に興味を持つと、彼女の作品にも興味が出てくる。『勝手にしやがれ』は見ているとしても、『孤高』や『悲しみよこんにちは』、そして『リリス』。そのようにして観客をジーン・セバーグの作品にいざなってしまうのも、この映画の優れた点といえるかもしれない。
この映画の中ではだれもうまかったとか美人だったとかは言わない。いい人だったとか、フォトジェニックだったとかというほめ方をされるのだ。しかし、あるいはだからこそ彼女に魅かれ、その作品を見たくなる。