サーカス
2004/2/16
The Circus
1928年,アメリカ,72分
- 監督
- チャールズ・チャップリン
- 脚本
- チャールズ・チャップリン
- 撮影
- ローランド・H・トザロー
- 音楽
- チャールズ・チャップリン
- 出演
- チャールズ・チャップリン
- マーナ・ケネディ
- ハリー・クロッカー
- アラン・ガルシア
- ジョージ・デイヴィス
とある見世物小屋の前で気づかぬうちにすりに財布をポケットに入れられたチャーリー、すりが取り返そうとしているところの警官が来て、チャーリーは見事財布を手に入れる。しかし、それを使おうとしたところにもとの持ち主が来て、すりに間違われて警官に終われる羽目に。サーカースのテントに逃げ込んだチャーリーは警官とドタバタ喜劇を演じて観客は拍手喝さい、サーカスの座長はチャーリーを雇おうと考える。
舞台がサーカスなので、彼のパントマイムを中心としたギャグがぎっしりと詰め込まれていてそれだけでも楽しいが、さらに物語りも非常に感動的で、数あるチャップリン作品の中でも屈指の名作といえる。
チャップリンの演技というか動きの面白さについてはいまさら言うこともないだろう。どんなに短い短編でもそれがおかしいのは、彼の動きがなんとも面白いからだ。なぜ面白いのかはわからないけれど、それは言語を超えた肉体的な表現であり、だからこそ面白い。基本的には権力を皮肉ったりからかったりするところから笑いが生まれるから、権力関係が存在するところなら、誰でもが(もちろん権力を持っていない側の人が)笑うことができる。したがって、権力が存在する限り、10年たとうと1000年たとうと笑うことができるはずだ。この作品には、そんなチャップリンの面白さが濃密に詰め込まれているので、面白くないはずがない。
やはりチャップリンといえばギャグであり、それが十分堪能できるということで面白いわけだが、この作品は物語りもすごく面白い。チャップリンはホームレスであり、とことん貧乏で、サーカスに拾われる。かといってサーカスが裕福かというと、そういうわけでもなく、座長の娘はステージで失敗すると夕食を与えられず、いつもおなかをすかせている。チャーリーはもちろんその娘に恋をして、ラブ・ストーリーが展開していくわけだが、それからの話は、見てのお楽しみ。
とにかく、チャップリンはまったくしゃべることはなく(文字によるセリフが挿入されることはあるが、おそらくチャップリンのセリフというのはなかったように思う)、しかしそれでも気持ちを十全に説明し、話を盛り上げる。観客はチャーリーのしぐさに心をつかまれて、ぐんぐんと物語に入っていくわけだ。そして最後には言葉にならない感動が…
サーカスの映画というのはそれほど多くはないが、前に見た『ベアーズ・キス』という作品も視点が女の子の側に持ってこられてはいるが、基本的には同じような話だった。かなりファンタジックな話にはなっているが、なんとなく似ている。 だからどうということもないんだけれど、このチャップリンの『サーカス』は笑いにも何か根源的なものを感じるし、物語にも何か根源的なものを感じる。だから、いつまでたってもおかしいし、いつまでたっても感動的なのだ。まさに「古典」というべきなのか、映画は時代を超えるというべきなのか、とにかく面白い。