リトル・ストライカー
2004/4/20
There's only one Jimmy Grimble
2000年,イギリス=フランス,106分
- 監督
- ジョン・ヘイ
- 脚本
- ジョン・ヘイ
- リック・カーマイケル
- サイモン・メイル
- 撮影
- ジョン・デ・ボーマン
- 音楽
- サイモン・ボスウェル
- アレックス・ジェームズ
- 出演
- ルイス・マッケンジー
- ロバート・カーライル
- ジーナ・マッキー
- レイ・ウィンストン
マンチェスターに住むジミーはユナイテッドではなくシティのファンであるということと、体が小さいことでいつもいじめられ、家では母親の新しい恋人がどう見てもバカというので暗い生活を送っていた。しかしサッカーは大好きで、スクール杯の選手募集に応募する。何とかサブのメンバーに入ったジミーはその夜、謎のおばあさんに出会い、魔法の靴をもらう…
マンチェスターにロバート・カーライルにサッカーに少年と、イギリス映画の典型的な要素がすべてそろったヒューマン・コメディの佳作。劇場未公開だが、劇場公開されるイギリスのコメディに遜色のない出来。
マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティというネタはイギリス人の心を心地よくくすぐるものなのだろう。日本でもヨーロッパのサッカーはメジャーになり、そんなファン心理も伝わってくるようにはなったけれど、この映画で描かれているような「サッカーが全て」とでも言うような心持はなかなか理解しにくい。しかし、マイナーな弱いチームのファンというのはどこかで劣等感と誇りとを持ち合わせているという気持ちは理解できる。
それはつまり、「弱い」ということからくる劣等感は当然だが、強いチームを応援してしまう当たり前なやつらと自分は違うんだという誇りも持っているということで、この映画はその誇りの部分をうまく使っている。それはきっとマイナーなもの、少数派のものも救い上げるイギリスの文化でもあるのだと思う。イギリスという国にはいわゆる「負け組」の人が多いと思うのだが、そんな人たちも劣等感と同時に誇りを持っている。そんな誇りを、マイナーチームの誇りとすり合わせて、人々に勇気を与えようとする。そんな控えめなメッセージがこの映画からは穏やかに感じられる。
脚本/監督のジョン・ヘイはテレビの演出家で、映画はこれが2本目。1994年の前作(もちろん未公開)が不評で、長らく映画を撮らせてもらえなかった感じなので、この人自身がくすぶって、劣等感と誇りを併せ持ってすごしていたんじゃないかなどと想像してみる。この作品は小さいながら国際的ないくつかの映画祭で賞も取り、これはからはこんな地味なイギリス映画をどんどんとっていくのではないかと期待できる。
私はこんな地味なイギリス映画が好き。結局のところどれを見ても同じと言ってしまえばそれまでだけれど、ハリウッドの大作のうんざりするような仰々しさと比べて、とても心地よいのだ。ヒットした『フル・モンティ』や『リトル・ダンサー』(この映画のタイトルは多分この作品にあやかろうとしている)は設定で観客の心をつかんでヒットしたけれど、結局のところ内容は同じなのだ。売れた売れなかったに関係なく、ビデオ棚に並んでいるイギリスのコメディはどれをとってもきっと質はよい。見れば、自分の日常と共通する何かが出てきて、クスリと笑わされ、ホロリと泣かされる。
そんな小さなイギリス映画の数々が私の記憶のストックに積もっていきます。