スキャナーズ2
2004/9/10
Scanners 2 : The New Order
1990年,アメリカ,104分
- 監督
- クリスチャン・デュゲイ
- 原案
- デヴィッド・クローネンバーグ
- 脚本
- B・J・ネルソン
- 撮影
- ロドニー・ギボンズ
- 音楽
- マーティ・サイモン
- 出演
- デヴィッド・ヒューレット
- イヴァン・ポントン
- デボラ・ラフィン
- トム・バトラー
- イザベル・メジア
- ラオール・トゥルヒロ
ゲームセンターで暴れたひとりのスキャナーが捕らえられる。彼はスキャナーを研究しているモース博士の研究所に連れて行かれた。一方、大学の獣医学課の学生デヴィッドはひどい偏頭痛に悩まされていた。そんな時、買い物中にガールフレンドのアリスが強盗に襲われ、デヴィッドは怒りに駆られてその強盗に秘められていた力を使ってしまう…
デヴィッド・クローネンバーグの『スキャナーズ』の続編として作られた作品。クローネンバーグは参加しておらず、ごくごく普通のサスペンスになってしまった。前作を見ていればとりあえず楽しめはする。
前作の『スキャナーズ』は正当なサスペンス・ホラーにクローネンバーグの悪趣味が適度に加えられ、非常に面白い作品になっていた。そして、その終わり方からすると続編ができそうだったのだが、クローネンバーグが続編を作ることはなく、10年近くが経ってやっと続編ができたわけだが、そこにはクローネンバーグはおらず、物語も観客が期待していた第1作の直後の物語ではなかった。おそらく前作から20年から30年くらい後、そのころ生まれた子供たちが成人しようというころである。
設定は前作を踏襲し、スキャナーズたちの特性というか能力も基本的には継承している。しかし、決定的にかけているのはクローネンバーグの悪趣味さである。スキャナーが人に影響を与えるとき、彼らが頭を抱え、苦しむのは同じだが、そこにグロテスクさが足りない。それはつまり迫力が欠けているということであり、緊張感が減ずるということである。クローネンバーグの悪趣味さは一部の人を(あるいは多くの人を)その映画から遠ざけることもあるが、映画に迫力を与えるという意味では非常に意味があるのだと思う。この映画はそれを欠いてしまっているがためにどうもゆるゆるとした感じになってしまっている。
それを補うために、スキャナーズと人間を対立させて、人間の身勝手さを浮き立たせ、主人公をヒーローに仕立て上げるのだ。それによってヒーローへの没入というエンターテイメント的な面白さと、翻って自分自身に帰ってくる人間の身勝手さへの批判を引き出そうとしている。
とりあえずそれには成功しているのだが、いかんせん浅薄というか、深みがない。なんといってもデヴィッドのヒーローの仕立て上げ方に説得力がない。相手は警察だから、何でもできるのはわかるが、デヴィッドが使えるのは自分のスキャナーとしての力だけであるはずである。しかし、にもかかわらずデヴィッドは何をしても捕まらない。そしてなぜ捕まらないのかがわからない。
そのあたりの説得力のなさがこの映画の全体に漂っているのだ。
そしてこのリアリティのなさというのは、この映画の根本的な問題でもある。それはこれがSFとしてのリアリティを全く欠いているということだ。前作でもSFとしての詰めの甘さというのは感じられたが、この2作目では根本的にSFであろうという姿勢を欠いている。スキャナーの能力を所与のものとしてそれに科学的な理論付けを施すことなく、さらにそれを制御するという新薬の作用についても何も説明しない。
したがって、映画の筋は進んでいくが、そのそこにあってしかるべきの論理的な基盤を欠いているのだ。だから全体的になんだかぼんやりとしていて、迫力がないということになるのだと思う。