スパイキッズ2 失われた夢の島
2004/10/11
Spy Kids 2: The Island of Lost Dream
2002年,アメリカ,100分
- 監督
- ロバート・ロドリゲス
- 脚本
- ロバート・ロドリゲス
- 撮影
- ギレルモ・ナヴァロ
- 音楽
- ジョン・デブニー
- ロバート・ロドリゲス
- 出演
- アレクサ・ヴェガ
- ダリル・サバラ
- アントニオ・バンデラス
- カーラ・グギーノ
- マシュー・オリアリー
- エミリー・オスメント
- スティーヴ・ブシェミ
- マイク・ジャッジ
カルメンとジュニの姉弟が世界の危機を救ったことで、OSS(戦略事務局)はスパイキッズ部門を創設、2人もそこのスパイとなった。OSSの新局長が決まる日、新局長には2人の父であるグレゴリオではなく、ライバルのダナゴンが選ばれ、さらに重要兵器であるトランスムッカーが盗まれるという事件がおきてしまう…
スパイ夫婦の2人の子供がスパイとして大活躍する「スパイキッズ」シリーズの第2作。子供たちがちゃんとしたスパイになったことで、前作よりもしっかりとした出来になり、様々な工夫も凝らしやすくなったという感じ。
この映画、ディズニーではないが、やはりアメリカの子ども映画という感じ。残酷なシーンがないというのはもちろんだが、結局のところ悪人がいない。いたずらっ子はいても、性根から悪い人間は登場しないのだ。大人にはそれは物足りない気がするということは、もちろん子供もそうだろう。本当に小さい子供なら、おとぎ話としてそれですむわけだが、ちょっとわけのわかってきた子供なら、もうこんな子供だましには引っかからない。したがって、この映画は基本的にはお子様向けの映画に過ぎない。
しかし、小さな子供が見に来るということは親も一緒に見にくるということであって、一緒に見に来る親も退屈しないようにしてしまうところがハリウッドの面白いところだ。物語はあくまでもおとぎ話だが、映画の細部にはちょっとした笑いのネタや、細かいこだわりが仕掛けられている。たとえば、頭の磁石で飛行機にくっついて飛んでいった工作員たちが、基地について降りた後、首の凝りをほぐそうと首をひねっているしぐさがちらりと映る。このあたりのこだわりは非常にB級な感じで、ロバート・ロドリゲスっぽくってとてもいい。
それでもやはり、あまりにご都合主義のおとぎ話的展開には辟易するといえなくもない。特に気になる点は2つある。1つは主人公の子供たちに比べて大人たちがあまりに情けなさ過ぎるという点、もう1つは基本的にSFであるにもかかわらず、サイエンスの部分が完全にないがしろにされてしまっているという点である。
まず1つ目の、大人たちが情けなさ過ぎるという点だが、おとぎ話というのはそもそも、子供たちが現実の世界とは違うものとして、自分の思い通りになる世界として現れるものである。小さな子供が同じ絵本を繰り返し読んでくれとせがむのは、その絵本の世界が自分にとって予測可能な世界であり、自分の思い通りになる世界だからである。子供たちにとって現実の世界は驚きに満ち溢れ、自分の思い通りにはならない世界であるので、自分の思い通りになるおとぎ話の世界に安心感とでも言うようなものを感じるのではないか。
この映画もそのようなおとぎ話の世界の延長であり、大人によって支配された現実の世界とは違う子供によってコントロールされる世界がそこにある。それを見る子供たちはすでに暗記してしまった絵本を読んでもらうときのような安心感をそこから得るのだろう。そのためにはそこではヒーローたる子供がスーパーな存在でなくてはならず、添え物の大人はあくまでも子供にコントロールされる存在でなければならない。それによって、映画を観る子供の自尊心は満足させられる。
そこまでわかった上でこの映画を観るならば、おとぎ話に過ぎないとは思ってもそれはこれが子供向けの映画だからであるからで、ことさらそれを非難する必要なないと思えるのではないか。
しかし、もうひとつのサイエンスの部分がないがしろにされているという点は看過できない。SFというのはサイエンスの部分から推論して行って、物語を楽しむものであるから、そのサイエンスの部分が欠けてしまうと、全体的にぼやんとしてしまう。子供向けだから小難しいサイエンスの部分を省こうと考えるのは大人の勝手だ。この映画はおとぎ話であるからこそ、サイエンスの部分にまで子供にでも理解できる論理が必要だったはずなのだ。すべてを子供が理解できる論理と展開で構成しなければ、本当に子供がコントロールできるおとぎ話にはならない。それはおとぎ話ではなく、子供だましに過ぎなくなってしまうのだ。
特にトランスムッカーというこの映画の眼目となる装置が科学的に説明されていないというのは致命的だ。それによってせっかく作り上げられた世界の全体がぼやんとしてしまう。それを子供にもわかりやすいように論理だてるというのは、もちろんかなり難しいことだが、そこまできっちりと作られた作品が見てみたかった。