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片腕カンフー対空とぶギロチン

2004/10/12
獨臂拳王対戦血滴子
1975年,香港,93分

監督
ジミー・ウォング
脚本
ジミー・ウォング
撮影
チュー・ヤウム
音楽
シュン・チーチェン
出演
ジミー・ウォング
カム・カン
ドリス・ルン
シャム・チンボー
ロン・フェイ
preview
 清朝時代の中国、漢族の反乱を阻止するため暗殺者が跋扈していた。その中でも無敵といわれる“空飛ぶギロチン”は弟子2人を“片腕ドラゴン”に殺されたことを知り、彼への復讐のため旅に出る。片や“片腕ドラゴン”は道場を開いて、若い武術家の育成に力を注いでいた…
 ジミー・ウォングの代表作である『片腕ドラゴン』の続編。B級テイスト満載のハチャメチャな映像やアクションシーンが受け、『キル・ビル vol.1』の元ネタのひとつにもなった。
review
 この映画は30年前の映画だが、今ならば自主制作映画のレベルと言っていいだろう。片腕ドラゴンの片腕は服の下に隠されているのがばればれ、アクションシーンにスピード感はなく、当たっていないのも見え見え、ギロチンで首を切る瞬間も血が飛び散ることもなく、切られた後もまったく生々しさはない。
 特に、この映画はアクション映画であり、舞踏会を中心としてアクションシーンがほとんどを占めるのに、そのアクションにあまりに迫力がない。今のハリウッドのワイヤーを多用したアクションシーンやジェット・リーのアクションシーンとはかけ離れすぎていて比べる術もないが、ジャッキー・チェンと比べても、ブルース・リーと比べても、格段に見劣りする。この映画が『キル・ビル』で取り上げられるまで浮かび上がってこなかったのも詮もない事という気がする。
 つまり、この映画は面白くない。アクションシーンを倍速にしてようやく普通のカンフー映画になるというくらいの代物で、“カンフーもの”を期待してみると、完全に肩透かしを食らってしまうのである。

 しかし、さすがにB級アクション映画オタクのタランティーノが目をつけただけあって、その発想はかなり突飛で面白い。この作品の前作である『片腕ドラゴン』を見ないと、その発想の真の面白さはわからないのかもしれないが、とにかく70年代にこんなばかげた発想で映画を作ってしまったというのは尊敬に値することではないかと思う。
 “空飛ぶギロチン”なる武器の突飛さ、外国人の刺客として登場する外国のイメージのハチャメチャさ(インド人といえばヨガはわかるが、ヨガは武術じゃない…、日本人らしき躍馬次郎にいたっては日本人にしてみると一体全体何のことやら…)、展開の無理さ、などなどわけのわからないものは枚挙に暇がない。その突飛さが面白いのがB級映画と呼ばれるものであり、この映画は徹底的にB級映画である。発想の面白さで映画を作ってしまうということ、リアルさは追求せずにとにかく面白ければいいのだと考えてしまうその考え方がすばらしい。
 そしてそのようにB級映画として興味深いというだけでなく、現在に至るアクション映画というジャンルの変化にも深く関わっているのではないかと思う。つまり、その昔、ハリウッドではアクション映画とコメディ映画は画然と分かれたまったく別のジャンルだった。アクション映画といえばウェスタン、コメディ映画といえばスラップスティック、とそれぞれにわかりやすい映画だった。
 しかし、香港はアクションとコメディを“娯楽”というくくりで一緒にしてしまう。それを完成させたのはジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーという中国戯劇学院出身のスターたちであり、80年代になるが、彼らが活躍し始めたのは70年代の後半であり(『燃えよデブゴン』の第1作が作られたのは77年)、このあたりからその波は確実に始まっていたといえる。
 そしてその頃、アメリカでも『燃えよドラゴン』をきっかけとして、カンフー・ブームが起き、アクション映画は確実に変化していっていた。
 という流れの元のあたりに、この映画もある。この作品の前作『片腕ドラゴン』が作られたのは1972年で、『燃えよドラゴン』と同年である。片や、正統派カンフー・映画、片やB級映画だが、どちらも現在にまでに至る流れのもとにあると言っていいのだ。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 香港

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