ハタリ!
2005/9/12
Hatari !
1961年,アメリカ,159分
- 監督
- ハワード・ホークス
- 原作
- ハリー・カーニッツ
- 脚本
- リー・ブラケット
- 撮影
- ラッセル・ハーラン
- 音楽
- ヘンリー・マンシーニ
- 出演
- ジョン・ウェイン
- エリザ・マルティネリ
- ハーディ・クリューガー
- レッド・バトンズ
- ジェラール・ブラン
アフリカで動物を捕獲する男たち、サイを追っている時、その仲間の一人インディアンが怪我を負った。病院に彼を連れて行った仲間たちはその病院でフランス男とひと悶着あったあと、くたびれて帰った。そのリーダーのショーンが部屋に入ると、ベッドに見知らぬ女性が。翌朝、彼女はスイスの動物園から取材にやってきたダラスという女性だとわかるが、ショーンは彼女の滞在を嫌がり…
ハワード・ホークスとジョン・ウェインのコンビがアフリカの地でアフリカ版カウボーイの活躍を撮った冒険活劇だが、陽気でコメディ的な要素も強く、誰でも楽しめる娯楽作品になっている。
この映画の見もののひとつは動物を追いかけるシーンの迫力。実際にアフリカで撮影しただけあって、移動する車から撮った野生動物の迫力はさすがのもの。車に体当たりしてくるサイ、すごいスピードで走り回るバッファロー、いま作ったら動物保護の観点からかなり問題になりそうな映画だけに、この作品に含まれるこれらのシーンの迫力はすごいし、貴重でもある。
ここに映っている動物のどれくらいが本当の野生動物で、どれくらいが飼いならされた動物なのかわからない。おそらくは飼いならされた動物が多いのだろうが、サバンナでロケされた動物の群れを追いかけるシーンなどは本当の野生動物だろう。そんなことを考えながら、ついつい手に力が入ってしまう。監督の演出や役者の演技云々ということとはまったく関係なく、その自然の迫力で映画に圧倒されてしまうのだ。
もちろん、それだけだとナショナルジオグラフィック・チャンネルのドキュメンタリーと変わらないものになってしまうわけで、それを娯楽作品にするのがハワード・ホークスの手腕である。そして、この作品はジョン・ウェイン演じるショーンを中心とする仲間たちの活動を描くという点で、西部劇と同じ構造をとる。『リオ・ブラボー』でジョン・ウェインが保安官を演じ、周りに保安官補たちがいたようにこの作品ではジョン・ウェインが動物を捉えるボスを演じ、その周りにチームを組む仲間がいるというわけだ。
そして、やっていることもまるで西部劇のカウボーイのように投げ縄で動物を捕らえるということだけに、さらにその印象が強まる。カウボーイは場所を西部からアフリカに移し、乗り物を馬から車に変えて、しかし変わらず投げ縄を動物に投げる。どこにいてもカウボーイが象徴するロマンは色あせない。それをホークスはアフリカで証明して見せるようだ。
そして、仲間を描くという西部劇らしい部分でも、ホークすらしさが顔を覗かせる。それは、親密な仲間うちによそ者が入ってくる。よそ者は対立や新しい友情や新しい恋をもたらし、新たなドラマを生み出す。そして、その構造は、同時に観客もその仲間内に迎えられる。観客はその仲間の一人のような感覚でそこで起きるドラマを見つめ、その展開に一喜一憂することになるのだ。それを実現するのは、ホークスが用意する繰り返しによる意味の生成や仲間内だけに通じる目配せであり、それが観客を映画に引き込む。
これこそがホークスの娯楽映画の醍醐味というか、楽しみであるのではないかと私は思う。われわれが暮らす世界とは別世界で暮らす人々のひとりとして行動する非日常体験、それはまさに娯楽映画の王道であり、映画の映画らしい楽しみ方の典型である。そしてそれはもちろんハリウッド映画の王道でもある。
主プロットとはあまり関係なく、ヒーローとヒロインが結ばれてハッピーエンドとなるハリウッドの古典的スタイルの映画は、今見ると鼻白い想いをするものも多いのだが、ハワード・ホークスがそれをやるとなんだかほほえましく、最後まで楽しく見られたという感想を持つことが出来る。
40年たっても、娯楽映画として文句なしに楽しむことが出来る映画を撮るハワード・ホークスは映画史的な価値うんぬんをするまでもなく、やはりすごい。