キューティーハニー
2005/9/18
2003年,日本,93分
- 監督
- 庵野秀明
- 原作
- 永井豪
- 脚本
- 高橋留美
- 庵野秀明
- 撮影
- 神谷誠
- 音楽
- 遠藤幹雄
- 出演
- 佐藤江梨子
- 市川実日子
- 村上淳
- 京本政樹
- 及川光博
- 篠井英介
- 吉田日出子
- 松尾スズキ
- 片桐はいり
- 松田龍平
- 小日向しえ
- 手塚とおる
如月ハニーは宇津木博士の助けを呼ぶ声に答えて、海ほたるに駆けつける。そこではゴールドクローと言う鎧に身を包んだ女が警察に取り囲まれていた。警察も手を出せないゴールドクローにハニーは立ち向かい、宇津木博士を救うが…
セクシーなヒロインが活躍する永井豪原作の同名コミックを『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明が実写映画化。
はじめからいきなり戦隊ものの悪役のような格好をした片桐はいりが出てきて意表をつかれる。キューティーハニーってこんな仮面ライダーみたいな話だったっけ… そんな戸惑いもありながら、映画は意外と楽しい。CGもちゃちで、アクションもまったくなっていないが、コメディ映画としての楽しさがある。松尾スズキや吉田日出子という脇役もいい味出しているし、佐藤江梨子もヒロインとしての魅力はあまり感じられないが、天然ボケの笑いはうまく醸し出している。
つまり、この映画の面白さはコメディ的な要素に尽きる。村上淳演じる新聞記者がどう考えても新聞記者の生活ではないという非常にベタな笑いをはじめ、あまりにべたべたな笑いのオンパレードに逆に笑ってしまう。この過剰さの笑いは最近のハリウッド映画によくある傾向でもあり、庵野秀明は彼らしく、それを取り入れたということなのだろうか。
そう考えると、篠井英介をはじめとして敵役のパンサークローってのはまったく映画の面白みに寄与していない。中途半端なメイクと中途半端な主張、偉そうなことを言ってあっさりと死んでしまうというわかりやすい笑いはあるものの、ミッチーにしても、いったいなんなのか。サトエリとの戦いに緊迫感があるわけはないのだから、どこかで笑いを持ってこなければまったく何の訳にも立たないのに、その笑いがないのだ。
この映画を私は「どうせ面白くないだろう」と思って見始めたわけだが、実物はその想像を下回るトホホ感で、意表をついた。その想像以上のトホホ感が失笑にも似た笑いを誘い、意外に面白く見れてしまった。これもひとつの狙いなのだろう。この徹底的なリアリティのなさは非常に漫画的だ。そもそも原作が漫画だから、この映画が漫画的になるのは自然なようにおもうかもしれないが、漫画をそのまま映画にしたときのリアリティのなさというのは作品を台無しにする可能性が高い。だから漫画を原作にした映画は多くの場合にそこに何らかのリアリティを加えようとする。しかし、この作品はリアリティのなさをそのまま映像化することにこだわり、漫画っぽさをそのまま表現している。これはやはりもともとアニメのクリエイターであった庵野秀明らしいやり方だともいえるだろう。
同じように漫画を漫画的にリアリティのないままに映画化した作品として傑出した出来だった『下妻物語』を思い出した。『下妻物語』と比べるとこの作品は主人公・脇役両方のキャラクターの作り方の点で劣っているように思える。その部分をクリアして、魅力的な作品を作れれば、“漫画映画”とでも呼ぶべき新しいジャンルを作る作品のひとつとなったかもしれないとも思う。