エイリアン VS ヴァネッサ・パラディ
2005/10/4
Atomik Circus - Le Retour de James Batail
2004年,フランス=ドイツ=イギリス,91分
- 監督
- ディディエ・ポワロー
- ティエリー・ポワロー
- 脚本
- ディディエ・ポワロー
- ティエリー・ポワロー
- ジャン=フィリップ・デュガン
- マリー・ガレル・ウェス
- ヴァンサン・ダヴィエ
- 撮影
- フィリップ・ル・スール
- 音楽
- リトル・ラビッツ
- 出演
- ヴァネッサ・パラディ
- ジェイソン・フレミング
- ブノワ・ポールヴールド
- ジャン=ピエール・マリエール
- ヴェナンチーノ・ヴェナンチーニ
片田舎の町スコットレット、その町のボス、ボスコの娘コンチャは歌手にあこがれ、今年もフェスティバルの舞台で歌を披露していた。そのフェスティバルに参加するためやってきたスタントマンのジェームズがコンチャに一目ぼれ、しかしボスコはそれに反対する…
フランスで数多くのPVを監督してきたポワロー兄弟の長編映画デビュー作。別に、ヴァネッサ・パラディが巨大化してエイリアンと戦うわけではありません。
この映画が突飛に見えるのはあくまでも邦題のせい『エイリアン VS ヴァネッサ・パラディ』というタイトルはもちろん『エイリアン
VS プレデター』を意識しているわけだが、この映画は別にエイリアンとヴァネッサ・パラディが対決する映画ではない。確かにエイリアンがやってきて、ヴァネッサ・パラディがそれに襲われはするが、ヴァネッサ・パラディはバネッサ・パラディとしてそれに立ち向かうわけではなく、コンチャという劇中人物としてエイリアンと対峙するだけだ。
つまり、突飛な邦題にもかかわらず、この映画は意外と普通の映画なのだ。確かにエイリアンの形態や、登場するキャラクターのエキセントリックさをいう点では奇怪な映画ではある。しかし邦題から想像するほど変わった映画というわけではないのだ。この邦題、人の興味を引く役には立つが、映画の内容を正しく伝えているかどうかという点には疑問が残る。英語をそのままカタカナ表記するのも芸がないが、内容とかけ離れた邦題というのも…
この映画でいちばん突飛で面白いのが実はこの邦題。映画の内容は邦題に比べるとあまりに普通で印象に残らない。エイリアンがやってきて人を襲うというのはただのパニックムービーだし、その肝心のエイリアンが詳しく描かれていないので、その恐怖が伝わってこない。
あるいはむしろパニックムービーというよりはただのコメディ映画なのかもしれない。エイリアンというのは単なる道具、それにまつわり登場するわけのわからないキャラクターこそがこの映画の中心なのだろう。そしてそれはコメディという形で観客にアピールするわけだが、犬を虐待して(もちろん本物の犬は使っていないが))甲高い声を上げさせるといった悪趣味なものから、唐突に異次元の話が出るというわけのわからないものまで様々なものがある。しかし、これがなかなか笑えない。フランスのコメディというのはなかなか日本人には受けにくいというのもあり、これもそのひとつの例なのかもしれないが、この映画で爆笑できるという人は日本にはほとんどいないだろう。
そして、結局行き着くところは、ヴァネッサ・パラディである。この映画は結局のところヴァネッサ・パラディでもっている。アイドル/女優として活躍してきたヴァネッサ・パラディがジョニー・デップと事実婚状態となり(結婚したくない理由はジョニー・デップがヴァネッサのパラディという姓を変えさせたくないかららしい…)、子供を二人産み、しかし現役モデルとして活躍し、5年ぶりの銀幕復帰。この話題性だけでとりあえず映画は成り立つ。そして、さらにこの映画のヴァネッサ・パラディは子供を産もうと何しようとヴァネッサ・パラディなのだということを実証してみせる。パワフルで、セクシーで、ロリータっぽさも残す。監督もPVの撮ってきただけあって、ステージシーンなどでヴァネッサ・パラディの魅力をうまく引き出す。見終わってみると、エイリアンも周りの人たちもあまり印象に残らず、ヴァネッサ・パラディの動いている姿だけが残った。