シェイド
2005/10/13
Shade
2003年,アメリカ,101分
- 監督
- ダミアン・ニーマン
- 脚本
- ダミアン・ニーマン
- 撮影
- アンソニー・B・リッチモンド
- 音楽
- クリストファー・ヤング
- 出演
- ガブリエル・バーン
- タンディ・ニュートン
- スチュアート・タウンゼント
- ハル・ホルブルック
- ダイナ・メリル
- ジェイミー・フォックス
- シルヴェスター・スタローン
- メラニー・グリフィス
一昔前から詐欺師を生業としてきたミラーとステファニー、ステファニーは恋人で腕利きのギャンブラーであるジェニングスをミラーに紹介し、いかさま賭博で大金を儲けようという話を持ちかける。そして、もう一人仲間としてトリックの名手ヴァーノンを加えて、いよいよ計画の実行に乗り出す…
自身もポーカーでプロ級の腕前を持つというダミアン・ニーマンの監督デビュー作。キャストは豪華だが話は地味。
これは基本的にトランプのいかさまの映画であるが、それはつまり詐欺の映画、詐欺師ものであるということだ。先日の『コンフィデンス』のところでも書いたが、詐欺師ものの眼目は誰が誰にだまされるのか、誰が誰をだますのか、ということを観客が推理小説のような楽しむところにある。その点ではこの作品はなかなかのものだ。主人公といえるミラーとステファニーとヴァーノン、彼らの微妙な関係とほのめかされる過去、それは彼らの誰かが誰かを裏切り、だますのだということをほのめかしているが、いったい誰が誰をだますのかはなかなか明らかにならない。
その秘訣は、この3人という人数にあるだろう。3人の関係というのはドラマを生みやすい。それは3通りの1対2という関係が生じやすく、しかもその関係は変化しやすいからだ。特に男がふたりと女がひとりの場合、そのひとりの女を中心に関係はめまぐるしく変化する。それがゆえに、その関係のどれが最終的に選択され、その中の誰が最終的に勝つのかということがわかりにくくなるのだ。 この作品はそれを非常にうまく生かし、最後の最後まで観客の興味をひきつける。そして、それに決着をつけるのは往々にして外部の力であるのだ…
考えてみれば『コンフィデンス』も実は同じような展開を持つ作品だった。こちらの作品の場合、3人ではなく3つの勢力が存在し、その間で人間の行き来があって関係が変化して行ったが、基本的には3人の関係を拡張し、より複雑にしただけのことだ。
3とは詐欺師にとって魔法の数字、映画の終盤でヴァーノンが「3はラッキーナンバーだ」というのにも、そのあたりの意味が込められているのではないだろうか。
それにしても、この作品のスタローンはやばい。80年代にはトップスタートして活躍、90年代にはコメディに活路を見出すなどして生き残ってきたスタローンもここ数年は本当にひどい有様だ。2003年には脇役としてこの作品と『スパイキッズ3D』に出演しているが、どちらも目を覆いたくなるひどさだ。この作品を観ればわかるがまず顔がおかしい。若作りなのか、整形なのか、わざと変なメイクをしているのか、どう見ても巨万の富を築いたギャンブラーには見えない変な顔をしている。これでは客を呼べないから、主演する作品も『D-TOX』なんていうB級映画しかない。
この『シェイド』では、いかさま賭博師だから、いんちき臭くてもいいのかもしれないが、伝説のギャンブラーといわれるからにはそれなりのお金と地位を築いているはずで、実際に100万ドル単位のお金が動くのだから、もう少し上品な貫禄のあるキャラクターをキャスティングした方がよかったような気もするが…このスタローンのおかげでなんだか全体が嘘っぽいというか、ちゃちな話のように見えて、100万ドルというお金にも説得力がなくなってしまったような気がする。これなら、もっと小さな町を舞台にした小さな話にして、1万ドルの大金を!みたいなB級バリバリの映画にした方が面白かったような気がする。
スタローンの生き残る道はもうB級映画しかないとこの映画を見て確信してしまった…