社長繁盛記
2005/11/7
1968年,日本,87分
- 監督
- 松林宗恵
- 脚本
- 笠原良三
- 撮影
- 長谷川清
- 音楽
- 宮川泰
- 出演
- 森繁久彌
- 小林桂樹
- 黒沢年男
- 加東大介
- 谷啓
- 司葉子
- 酒井和歌子
- 岡田可愛
- 小沢昭一
- 宮口精二
- 藤原釜足
- 中村伸郎
高山産業の社長秘書の田中徹は従兄弟の旦那で会社の先輩にあたる営業部長の本庄のうちに居候をしている。いつもひとり早く出かけるのは、近所に住む女子社員の中川とバス停で落ち合うためだった。そして、ある日曜日にデートの約束を取り付けるが、社長が本庄と喧嘩した末、名古屋への出張についていかされる羽目になってしまい…
森繁の「社長シリーズ」の中の一作。相変わらずのメンバーで、相変わらずのドタバタ喜劇。寅さん並みのワン・パターンだが、このワン・パターンが見ていて楽しくもある。
→続編
私は「社長シリーズ」はあまり見たことがないのだが、とりあえず森繁久彌と加東大介と小林桂樹のトリオには馴染みがある。今回、主人公のひとりとなっている田中徹を演じる黒沢年男がこの「社長シリーズ」に加わったのはこの作品の前作に当たる『社長千一夜』であるらしい。このシリーズはどれが何作目なのかと数えるのもなかなか難しいが、とりあえずここまでの十数年でに30作以上が作られており、マンネリ化と出演者の高齢化は避けられないものとなっている。だから、新たに主役級に若手を起用して人身刷新を図ったということになるのだろう。もうひとり若手といえなくもない谷啓のほうはこの作品単発の出演である。
というわけで、これまでの作品と少し変わったような変わらないような感じだが、やっている事は相変わらずである。身勝手な森繁社長に手を焼く小林桂樹(部長)、それを温かく見守る(?)加東大介。偶然が偶然を呼んでどったんばったんしっちゃかめっちゃか、結局何の話だったのかはわからないが、なんとなく笑えるところがあったりするうちにあっという間に終わってしまう。
そんなこんなだが、この作品で面白かったのは小沢昭一。小沢昭一は変な中国人の役で谷啓とコンビを組んでおかしなことをやらかすのだが、中国人という設定だけにやりたい放題。谷啓演じる赤間部長を「オカマ、オカマ」と呼び、歌って踊って酔っ払う。口調が濁点や半濁点がしゃべれないいわゆる中国人口調というだけで、顔はちっとも中国人っぽくはないのだが、とりあえず中国人という了解ができて、文化のギャップで笑いをつくる。少々差別的な雰囲気もあるが、それも時代ということだろうか。この小沢昭一は、この作品以降『社長えんま帳』『社長学ABC』にも出演、『社長学ABC』では再び中国人役のところを見ると、この作品での小沢昭一はなかなか好評だったのだろう。
こんな牧歌的な作品が今の世の中で受けるとも思えないが、このようなワンパターンは安心できる。今でも『釣りバカ日誌』が毎年封切られているように、日本人はこういうワンパターンのシリーズものというのが好きなのだろう。よく考えたら、毎週テレビでやっている時代劇だってそんなワンパターンのひとつだし、マンガやアニメも基本的にワンパターンの繰り返しであるものが多い。そんな作品はいつの時代にもある。これもまたその一例ということ。