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続社長繁盛記

2005/11/9
1968年,日本,90分

監督
松林宗恵
脚本
笠原良三
撮影
長谷川清
音楽
宮川泰
出演
森繁久彌
小林桂樹
黒沢年男
加東大介
谷啓
司葉子
酒井和歌子
岡田可愛
小沢昭一
宮口精二
藤原釜足
中村伸郎
河津清三郎
preview
 高山産業の社長圭太郎は社の若返り策の一環として、体力テストを実施することにした。自ら若返りの先頭に立つ圭太郎は一夜漬けで体力テストに備え、みごと好成績を挙げるが、翌日は早速地鎮祭の用で高松に飛び、その旅程でなじみの銀座のバーのママとあうが…
 森繁の「社長シリーズ」の中の一作「社長繁盛記」の続編だが、このシリーズは基本的に正・続2本で一本という感じなので、正編を見ていないと何のことやらさっぱりわからない。やってることはいつもと同じ。
review

 これは「社長シリーズ」だから、一応社長が主人公なわけで、そうすると他の社長っていうのも色々登場する。今作では中村伸郎演じる藤川社長がその人なわけだが、この藤川社長というのがまた明治村の理事という仕事に入れ込んでいて、仕事のほうはどうもさっぱりという感じの社長である。そして、主人公の高山社長のところの総務部長である有賀(いつもの加東大介)と明治村仲間ということで、仕事のことよりも明治村のことばかりで登場する。
 このアタリの牧歌的な感じがいかにも時代を感じさせる。主人公の高山社長はそうではないが、この時代の社長といえば、仕事は部下に任せて自分は周辺のことというか、社交のほうを重んじて、それがまた社長同士とか取引先の重役とかとの関係を潤滑にして、仕事もうまくいけばいいという感じの、のんびりした環境なのである。
 もちろん当時もそんなのんびりした会社ばかりではなかっただろうが、現在の生き馬の目を抜く競争社会とは少し違うムラ社会的な要素があったことは想像に難くない。
 そう考えると、この明治村というのもある意味では象徴的なものなのかもしれない。当時の社長達は多くが明治の生まれ、しかし部下達は大正だか昭和の生まれ。彼らが明治の遺物にノスタルジーを覚えるというのは、自分たちもまた少しずつ時代遅れになって行き、近々遺物になってしまうということの暗喩であるのかもしれないのだ。
 明治村で建物を保存し、それを活用しようとするというのは、自分たちもまだまだやれるということを再確認し、古いもののよさを人々に伝えようとすることなのかもしれない。明治村は1962年に財団として成立し、1965年にいまでいうテーマパークとしての博物館が開村した。この作品が作られた1968年はまさに明治村にしてみれば、どんどん建物を増やし拡張していく時代。この映画はおそらくそんな明治村がスポンサーの一つとなって作られたのだろう。時代的には定年になった明治末生まれの人たちが精力的に活動する時代であり、それが明治村というものの成立を促したのだろう。
 そして、それは現在次々と誕生している昭和レトロのテーマパークのごときものにも通じる。定年世代に差し掛かった人たちが自分が子供時代をすごした黄金時代の建物やら風俗やらを保存して、そのよさを自分の子・孫たいに伝えようとする。これもそのような営為の一つである。

 映画の話からはすっかりずれてしまったが、この「社長シリーズ」にはたびたび世代間の違いとか、対立とか、世代交代とかいうことが登場する。長く続いたシリーズだから当たり前といえば当たり前だが、世代による価値観の違いというのはいつの時代にも存在し、それは対立を生むと同時に、新しい世代が古い世代を笑うというかたちで笑いも生み、しかし人生の先輩である古い世代に学ぶべきことも多くあるという教訓譚も生む。
 それがうまく組み合わさったとき、映画でも「これは」という面白い作品が生まれる。この『社長繁盛記』は世代の対立を描くというよりは古い世代のノスタルジーを描いた作品だから、そのような面白みは生み出さなかったが、シリーズの最初のほうでは小林桂樹がまだ若い世代を代表しており、世代間の対立が面白く描いていたように思える。この作品前後では黒沢年男をそのような役回りで使おうと考えているのだろうが、今ひとつ成功していないように思える。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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