理想の恋人.com
2006/7/8
Must Love Dogs
2005年,アメリカ,98分
- 監督
- ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ
- 原作
- クレア・クック
- 脚本
- ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ
- 撮影
- ジョン・ベイリー
- 音楽
- クレイグ・アームストロング
- 出演
- ダイアン・レイン
- ジョン・キューザック
- エリザベス・パーキンス
- クリストファー・プラマー
- ストッカード・チャニング
離婚したばかりの幼稚園の教諭サラは兄弟たちに新しい相手を探せとせっつかれるがなかなか乗り気になれない。一方、コチラも離婚したばかりのボート職人のジェイクは友人から気軽に遊ぶように言われるが腰が重い。そんな2人がふとしたことから出会う…
いわゆる王道のラブコメ。主人公の2人が30代後半と従来よりは少し上の世代というところが目新しいくらい。
非常にオーソドックスなラブコメディ。出会い系サイトという小道具も『ユー・ガット・メール』の頃とは違い、まったく珍しいものではなくなってしまった。しかし、その出会い系サイトがこの映画の眼目であることも間違いない。『ユー・ガット・メール』ではAOLがスポンサードしていたが、この作品に登場する出会い系サイト「理想の恋人.com(perfectmatch.com)」も実際に存在するサイトであり、この映画のスポンサーである。
だから出会い系サイトが人と人とをつなぎ、人を幸せにすることがあるということを熱心に描いている。ただ、そのこと自体がもう珍しくないことであるために、そう理想的ではないという現実もその中に織り込む。人々は自分を宣伝するためにプロフィールを偽り、写真を加工する。さすがに“さくら”は登場しないが、年齢を16歳と偽った(相手が勝手に誤解した?)ドリーのところに17歳の少年がやってきてしまうというエピソードを挟むあたり、匿名の出会いの難しさを語ってもいるのだろう。
そしてさらに言えば、この映画の主人公の2人はどちらも自分からすすんで出会い系に登録したわけではないというのも不思議なところだ。このことが示唆するのは出会いというのは偶然が大きく作用するものであって、それは出会い系サイトにおいても変わらないということではないか。作品中ではそれを「運命」という言葉に置き換えているが、運命も偶然も大して変わらないという気がする。
簡単に言えば、この作品は出会い系サイトを巡るごく平凡なラブコメであるということだ。出会い系サイトからはおかしなエピソードもたくさん生まれるし、素敵な恋も生まれる。そんな普通の映画である。
ただ、この映画を見ながら思ったことがいくつかある。ひとつは、どうしてアメリカ人はここまで恋に固執するのかということだ。パートナーがいないとまるで人間失格であるかのように、シングルでいることを忌み嫌う。別居や離婚をすればすぐ変わりのパートナーを探し、一人でいるということがイコール不幸であることだと決め付ける。
もちろん恋人がいれば楽しいが、一人でいるというのも悪いわけではないと思うのだが、アメリカではそうではないらしい。年齢、性別、セクシャリティを問わず、パートナーがいないということに尋常ではないという危機感を感じるのだ。その辺りの感覚はよくわからない。
もうひとつも、これとかかわってくることだが、最近ラブコメの年齢が上がっているような気がするということだ。昔は20歳前後とか、20代が主人公のものが多かった気がするのだが、最近は30歳前後のほうが割合として多い気がするし、この作品のように30代後半から40代という作品も少なくない。
これはおそらく離婚の日常化によって40代くらいでも新たにパートナーを探す人が増えていることの影響なのではないだろうか。同年代が主人公のラブコメは彼らを勇気付けるだろうし、20代よりもおもしろいエピソードもたくさん出てきそうだ。
このラブコメの高年齢化はこれからも続くだろうと私は思う。今はリーズ・ウィザースプーンがラブコメの新女王などと呼ばれているが、そのうちこの作品でいい味を出していたストッカード・チャニングなんかが“ラブコメの女王”と呼ばれるようになるかもしれない…