スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねぇ
2007/5/5
1962年,日本,69分
- 監督
- 弓削太郎
- 原作
- 青島幸男
- 脚本
- 高橋二三
- 撮影
- 石田博
- 音楽
- 萩原哲晶
- 出演
- 川口浩
- 川崎敬三
- 藤原礼子
- ハナ肇
- 目黒幸子
- 植木等
- クレイジーキャッツ
大学の同窓生で同じ会社に就職した石橋と夢田は共に家族の期待を一身に背負って出社する。そして彼らは社長の随行員としてアメリカに行く候補の7人に選ばれる。随行員になるためには女性関係が清潔でなければならないというのだが…
クレージーキャッツの大ヒット曲「スーダラ節」をモチーフにしたサラリーマン映画。クレイジーキャッツの映画というと東宝のものが有名だが、この作品は大映でクレイジーキャッツの映画としては一番最初のもの。
「わかっちゃいるけどやめられねぇ」このフレーズがはやったのは今から45年も前のこと、ずいぶん昔のことだけれど、この歌は今聞いてもついつい口ずさみたくなってしまうような歌だ。この歌をリアルタイムでサラリーマンとして聞いていた人たちはもうほとんどが70代以上でサラリーマンはやめてしまっているだろう。それだけ離れた時代の話なのに、ちっとも古臭く感じないのだ。
もちろん、風景や風俗は今と違うけれど、それもあくまで味として違和感なく見ることが出来る。
この作品は「スーダラ節」という曲から発想された映画であり、その意味ではクレージーキャッツが主役なわけだけれど、実際彼らは(ハナ肇を除いて)ほとんど映画には登場せず、登場しても歌っているだけだ。この映画の主人公はあくまでも川口浩と川崎敬三であり、彼らが演じるサラリーマンなのである。
サラリーマン映画自体は50年代からすでにあり、時代を反映して観客を集めていた。大映もその波に乗ってスターである川口浩と川崎敬三でサラリーマン路線を狙って以降という作品だろうし、その狙いは見事に成功していると言ってよく、翌月にはすぐに続編も公開されている。
戦後の日本においてサラリーマンという題材は多くの共感を得られるし、いろいろ描きようもある。しかもこの作品には「スーダラ節」というヒット曲もあり、まさに時代を象徴する作品になったと言っていいだろう。確かに出世を目標とする若いサラリーマンという図式はステレオタイプすぎる気もするが、ステレオタイプから笑いが生まれるというのはコメディの定石で、それはそれでいいのではないか。まあ、どうってことはない作品だが、なんだか楽しいし、見終わっても爽快だ。ただそれだけでいいじゃないか。
クレージーキャッツのほうは同時期に松竹で『クレージーの花嫁と七人の仲間』に出演し、3ヵ月後には東宝で『ニッポン無責任時代』に出演、本格的な映画進出を果たし、これ以降は全てが東宝作品となる。それでこの大映のほうのシリーズは立ち消えということになってしまったわけだけれど、クレージーのほうは大活躍となる。翌年には「日本一」シリーズを開始、「クレージー」シリーズ、「無責任」シリーズの3シリーズで71年までの10年間で30本以上の作品を撮っている。
映画が娯楽の王様だった時代、これだけの作品に出演したクレージーキャッツはまさに時代のアイドルであり寵児だった。そのクレージーキャッツの映画の出発点がこの作品であり、「スーダラ節」という最初のヒット曲をモチーフとしたという点で原点でもあると思うのだ。