16ブロック
2007/6/11
16 Blocks
2006年,アメリカ,101分
- 監督
- リチャード・ドナー
- 脚本
- リチャード・ウェンク
- 撮影
- グレン・マクファーソン
- 音楽
- クラウス・バデルト
- 出演
- ブルース・ウィリス
- モス・デフ
- デヴィッド・モース
- ジェナ・スターン
アル中のNY市警の刑事ジャック・モーズリーは夜勤明けを帰ろうとしていたところで警部補に証人のエディ・バンカーを16ブロック先の裁判所まで護送する任務を頼まれる。簡単な仕事だからと言われジャックはしぶしぶ引き受けるが、ジャックが車を止めて買い物をしている好きにエディが何者かに襲われる…
ブルース・ウィリス主演、リチャード・ドナー監督の典型的なクライム・サスペンス。特筆すべきことはないが、オーソドックスに面白い。
クライム・サスペンスとしては非常にオーソドックスで、出来はなかなか。『ダイ・ハード』を思わせるところもあるが、リチャード・ドナーだけに『リーサル・ウェポン』っぽいところもある。設定からいうと『48時間』っぽくもある。
ブルース・ウィリスは最近はどうもダメ警官という役が多く、この作品でもシャツの上からでもわかるだらしないおなかを揺らしながらダメさ加減を発揮している。どこかで見たことがあると思ったら、『スリー・リバース』と非常によく似た設定とプロットの映画だ。『スリー・リバース』でもブルース・ウィリスはアル中で、警察の内紛というか内部のゴタゴタに巻き込まれるのだ。
そのように、なんだかどこかで見たような映画で、新鮮さも特にないのだけれど、それでもそれなりに見せてしまうのがリチャード・ドナーとブルース・ウィリスのエンターテイナーとしてのすごさなのだろう。私はブルース・ウィリスはあまり好きではないけれど、頭を使いたくないときはついつい見てしまい、それなりに楽しめてしまう。この作品もそんな作品で、しかも最後にはちょっとした感動も誘うのだ。
ハリウッド映画というのは本当に無数の作品をとにかく垂れ流し、その中から観客をつかむものがあればそれでいいという作り方をしているというのがよくわかる。そして、リチャード・ドナーはその中で確実に面白い作品を作る職人なのだろう。この作品は時間の流れの中で忘れ去られるだろうけれど『リーサル・ウェポン』はやはり名作だし、『オーメン』も忘れてはいけない。他の作品の多くは「ああ、見たけどどんな映画だったっけ…」という作品だが、やはりついつい見てしまっていて、まあまあだったりイマイチだったりというものだ。
映画の娯楽性というのはやはり映画の最大の魅力であり、娯楽を求める観客にそれを絶えず供給し続けるハリウッドというのはやはりすごいのだ。ブルース・ウィリスもリチャード・ドナーも芸術家でもなければ偉大な作家でもないが、職人としては一流なのだということだ。
そして、この“なかなか”の作品にもう一つキラリと光る面白みを添えているのがモス・デフ演じるエディが出すなぞなぞである。それは「ものすごい嵐の日にバス停を車で通りかかると、親友と病気のおばあさんと理想の女性がいたが、車にはあと一人しか乗せられないというとき誰を乗せるか」というものだ。このクイズはこの映画の本当に最初のほうに登場し、最後まで繰り返される。そして、最後にブルース・ウィリス演じるジャックに見事に答えさせるのだ。このクイズをクイズとして成立させ、すべてにおいて大団円を演出する。これぞ娯楽映画、これぞハリウッドである。恋愛という要素がまったくないのはハリウッドらしくないが、リチャード・ドナーの映画は概してそういうものだ。恋愛がなくとも決してハードボイルドにはならず、軽妙なまままとめる、それもまた娯楽映画職人のさすがの技術なのである。