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ベストセラー

ニッポン無責任野郎

★★★.5-

2007/6/19
1962年,日本,86分

監督
古澤憲吾
脚本
田波靖男
松木ひろし
撮影
飯村正
音楽
宮川泰
出演
植木等
団令子
ハナ肇
草笛光子
谷啓
浦辺粂子
由利徹
preview
 C調男の源等は通りでたまたまぶつかった明音楽器の部長長谷川に取り入り、会社の派閥争いを利用して見事に会社にもぐりこむ。そして、調子よく適当に仕事をしながら同僚の丸山英子とも結婚に約束を取り付ける…
  植木等主演の「無責任」シリーズ第2弾。前作の『ニッポン無責任時代』の姉妹編という感じで、同様に調子いい植木等がとにかく楽しい。
review

 これは「無責任」シリーズの第2作で、東宝のクレイジーキャッツ物としても2作目(『若い季節』にも出演しているが、NHKの番組がもとになったものでクレイジーキャッツのための企画というわけではない)。まだまだこれから無数の作品が作られていくわけだが、2作目にしてすでにマンネリは始まっている。
  とはいえ、マンネリが必ずしも悪いわけではない。シリーズものというのはどこかに“お約束”があって、それを繰り返すことで観客も安心し、心置きなく楽しめるものであり、このクレイジーキャッツのシリーズにしても、植木等がC調で無責任な主人公を演じ、ハナ肇が間抜けな上司を演じるところにその根幹があるのだ。そしてそのような根幹がある以上、物語のパターンは限られ、この最初の2作に限ってみれば、いわばプータローの生活を送っていた植木等演じる主人公が適当なことを行って会社の重役に取り入ってその会社に就職し、その会社を引っ掻き回した挙句、自分は美味く切る抜けるというパターンである。
  そんなパターンだということは最初から明らかなのだが、その植木等の手法は様々であり、よくもまあこんないい加減なことが次々思いつくもんだと思うくらいにおかしなことをたくさんする。普通に考えれば後ろに手が回りそうなもんだが、彼が取り入るのは企業であり、重役であって、彼らの体面と面子が彼のような木っ端者に向きになることを止めさせるのだ。植木等演じる主人公は、そこのところも読みきってうまくかわしてスイスイっと泳ぎ回るのだ。
  その調子よさとテンポがやはり楽しく、「んなアホな」と思いつつ、ついつい面白く見てしまう。そして、この作品が前作と違うのは、恋愛というか植木等演じる主人公が結婚するというエピソードが挟み込まれることだ。その相手役を演じるのは団令子で、彼女もクレイジーキャッツの映画の常連となるわけだが、このふたりの掛け合いも楽しく、団令子演じる丸山英子のキャラクターも非常にうまく作られている。それに、谷啓演じる同僚の結婚話も挟むことで、普通の結婚とこの異常な結婚の対照を鮮明にして時代の空気を見事に表現しているのだ。

 そして、懐かしい風景が出てくるというのもこのシリーズを今見る魅力の一つだ。この時代をサラリーマンとして、あるいは子供として過ごしていた人はもちろん、まだ生まれていなかった(私のような)人にとってもここに映る東京の風景は魅力的だ。主舞台となる会社はおそらく前作と同じ場所で、この『ニッポン無責任野郎』と前作の『ニッポン無責任時代』は当時、東宝本社に出入りしていた無責任な快人物をモデルにした物語らしいから、このロケが行われたのも東宝本社なのかもしれないと思ったが、どうも大和證券本社らしい。場所は丸の内、永代通りと外堀通りの角である。
  映画では会社の前を都電が走っているが、これはおそらく永代通りで、今はその下を地下鉄東西線が走る。この作品には他にも帝国ホテルや上野動物園やどこかの遊園地なども登場する。今から見ればどこも牧歌的と言えるわけで、その牧歌的な雰囲気がまた楽な気分にさせてくれるのだ。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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