ディパーテッド
2007/7/2
The Departed
2006年,アメリカ,152分
- 監督
- マーティン・スコセッシ
- 原作
- アラン・マック
- フェリックス・チョン
- 脚本
- ウィリアム・モナハン
- 撮影
- ミヒャエル・バルハウス
- 音楽
- ハワード・ショア
- 出演
- レオナルド・ディカプリオ
- マット・デイモン
- ジャック・ニコルソン
- マーク・ウォールバーグ
- マーティン・シーン
- アレック・ボールドウィン
- ヴェラ・ファーミガ
マサチューセッツ州ボストン、マフィアのボスコステロに育てられたコリン・サリバンは州警察に入り、優秀な成績で特別捜査班に配属されるが、彼は実はコステロに送り込まれたスパイだった。一方、同時期に州警察に入ったビリー・コスティガンはコステロの組織に数年かけてもぐりこむという特別任務を言い渡される…
香港映画『インファナル・アフェア』のハリウッドリメイク。オリジナルと同様のハードボイルドな語り口でアカデミー作品賞、監督賞などを受賞。スコセッシは6度目のノミネートで初のオスカーを獲得した。
簡潔に感想をいうならば、これはやはりハリウッド映画であり、そして長い。
オリジナルを何年か前に見て、それも非常にハリウッド的な映画だったという記憶があるが、この“ハリウッド的”というのとハリウッド映画であるというのはやはりどこか違う。この作品は確かにオリジナルのプロットの面白さを生かして、込み入った物語を緊張感を持って描いている。しかし、やはり収まるところに収まるのがハリウッド映画であり、見終わってみればやはりそこには大団円が見えるのである。
加えて、この作品は大きな割合で登場する女性登場人物がいる。オリジナルはすごく男くさい映画で、女性の影は見えなかったような記憶があるが、この作品には主人公ふたりの間にマドリンという女性が存在する。このマドリンはは精神科医でマット・デイモン演じるコリンの恋人でありながら、前科者として診察にやってきたディカプリオ演じるビリーとも惹かれあう。
主プロットで見えない敵として対決するふたりが女性をめぐっても見えない敵として相対する、そんなよくできた話が…と思うと、「これはハリウッド映画なのだ」という感慨を覚えずにはいられない。しかも、このマドリンは主プロットにそれほど大きな影響は与えない。ふたりの心を動かしはするが、物語の流れが変わるような大きな影響を与えることはないのだ。そして、そうであるにもかかわらず、彼女との関係がふたりにとって非常に重要であるような印象を観客に与える。このようなサブ・プロットとしての恋愛もまたいかにもハリウッド的な映画の作り方である。
この映画の主プロット自体はなかなか面白い。ふたりがニアミスしながら、相手の正体を見抜けない展開には緊張感があり、状況の変化に応じて変わるふたりの(というよりはコリンの)心理を推察するのもひとつの面白さになっている。果たしてどちらが勝つのか、誰かがすべてを知りすべてを操る力を手にするのか、それともふたりとも戦いの駒として使い捨てられるのか、そのあたりの展開力はあるのだ。
しかし、この映画の(サブ・プロットに恋愛を持ってくるという)ハリウッド的な組み立て方はこのハードボイルドな展開に耽溺するのを邪魔する。さも意味ありげに登場するマドリンに惑わされて、物語の核心が見えなくなってしまうのだ。こんな余計な恋愛話はばっさりと捨てて、主プロットに集中したら、もっと面白くなったのではないかという気がする。
そしてそれはこの映画の「長い」という印象にもつながる。この映画の眼目は警察対ギャングという組織対組織の戦いである。だから、その決着がついた時点で映画としてはもう終わっていいはずだ。しかし、ここではその決着がついた後もビリーとコリンのふたりの戦いに決着をつけるべく映画が続く。そこにはもちろんマドリンもかかわってきて二転三転があるのだが、そこには今ひとつ興味がわかない。
そこに現れてくるのは、保身やエゴといった個人的な欲求であり、それは非常にウェットでハードボイルドなそれまでの展開と相反するのだ。だから、その部分がどうも冗長で「長い」と感じてしまう。最初の2時間は時間通り2時間に感じるのだけれど、最後の30分はそれだけで1時間半くらいに感じる、そんな感覚だ。好きな人にはたまらないということなのだろうが、私はこの頃どうもこういったいかにもなハリウッド映画には辟易のようだ。