恋するレストラン
2007/8/31
Het Schnitzxelparadijs
2005年,オランダ,82分
- 監督
- マルティン・コールホーベン
- 原作
- カリード・ブードゥー
- 脚本
- マルコ・ヴァン・ゲフィン
- 撮影
- ギド・ヴァン・ゲネプ
- 音楽
- メルシェル・メイルマンス
- 出演
- ムニール・ヴァレンタイン
- マルコ・ヴァン・ゲフィン
- ヤヒーラ・ゲイール
オランダに住むモロッコ人のノルディップは優秀な成績で高校を卒業し、父に歯医者になるように期待されている。考える時が必要だと考えたノルディップは父には図書館でバイトをすると偽ってホテルで皿洗いのバイトを始め、そこでさまざまな人と出会う…
オランダで大ヒットを記録したというラブ・コメディ。非常にオーソドックスなラブコメのオランダ風というところか。
オランダを舞台にしたモロッコ系の青年の物語というだけでなかなか日本からは想像しにくい題材なわけだが、始まってみれば何のことはないごくオーソドックスなラブ・コメである。ただ、モロッコ人ということが恋愛の(というよりは彼女の家族にとっての)障害になりはするのだが、それはたとえば『ゲス・フー/招かれざる恋人』のようなアメリカの人種を障害としたラブ・コメと似たようなものだと考えればいいし、作中でも言及されるようにこれは果てしなく繰り返される「ロミオとジュリエット」の変形のひとつなのである。
だから、展開もすごくオーソドックスで、物語の山場、ふたりの恋心がついに実るシーンはダンスシーンで、そこにいかにもな音楽が大きくかかる。このあたりはあまりに鼻白くて「何じゃそりゃ」と思ってしまうけれど、まあラブ・コメってのはこういうもんだ。全体を大雑把に見ればまったくそういったオーソドックスなラブ・コメだという以外に言いようがない。
しかし、まあこれはオランダ映画だからアメリカやフランスやイギリスや日本や韓国のラブ・コメとはちょっと違った特色があるはずだ。まずひとつはいろいろな人が出てくるという点だろう。主人公の人種が問題になるというところはさっきも書いたようにアメリカのラブ・コメでもよくあるわけだが、この作品では周囲の人たちでもモロッコ人の仲間のほかにセルビア人が出てきたりもする。このあたりは狭い地域に多くの国があるヨーロッパらしい特徴で、同時に彼らに対して比較的おおらかであるというところも(フランスやイギリスと比べた場合に)オランダらしいともいえる。
まあ、後はみんなが自転車に乗っているということだろうか。作中でセルビア人のゴランが「こんなまったいらなところはいやだ」というように、オランダは待ったいらな国で、そのためにみんな自転車に乗っている。貧乏にも金持ちも自転車に乗って道には自転車専用レーンがあるのだ。映画には自転車専用レーンは出てこなかったけれど、みんなで自転車に乗って(モロッコ人の同僚は自慢げにスクーターに乗っているけれど)ディスコに行くのだ。
このあたりののどかでおおらかな感じがオランダっぽくてとてもいい。それだからかはわからないが、出てくる人たちも悪役のサンダーを含めて憎めないキャラばかりでなんとなく彼らの見方をしたくなってくる。
たいした作品ではないが、まあ見ても損はないという感じ。ただ、この邦題はね。もう少しおしゃれな題名にすればもう少し売れたと思うんだが…