NINE QUEENS 華麗なる詐欺師たち
2007/9/4
Nueve Reines
2000年,アルゼンチン,115分
- 監督
- ファビアン・ビエリンスキー
- 脚本
- ファビアン・ビエリンスキー
- 撮影
- マルセロ・カモリーノ
- 音楽
- セサール・レネール
- 出演
- ガストン・パウルス
- リカルド・ダリン
- レティシア・ブレディス
- トマス・フォンシ
コンビニで釣銭をごまかすという詐欺を二度繰り返したフアンは居合わせた刑事に捕まるが、これが別の詐欺師マルコスだった。マルコスは相棒が行方不明になって困ってると言い、フアンに一日だけ相棒にならないかと持ち帰る。フアンはしぶしぶながら承知し、細かい仕事を次々とやるが…
ハリウッドで『クリミナル』としてソダーバーグプロデュースでリメイクされたアルゼンチンのクライム・サスペンス。
『クリミナル』は見ていたのだが、これがその元ネタだということはまったく知らずに見た。なんとなくどこかで聞いたような話だとは思ったが、詐欺師映画などどれも似たようなもので、だましあいの方法のバリエーションに過ぎないのだから、そんなこともさもありなんと最後まで見た。おかげで結末をわからずに見れてよかったが、この手の映画は結局最後にどんなどんでん返しが来るのかということに終盤はすっかり興味が行ってしまい、展開がじれったくなるのが常だ。この映画もその例に漏れず、終盤はじりじりした展開となった。
前半はいかにもな詐欺師映画、誰がだまし誰がだまされるのかという駆け引きがありながらフアンとカルロスは徐々に互いを信頼するようになり、しかしそこでアクシデントが起きて窮地に陥る。そこをふたりの機転で乗り切って、さあ大勝負、と4行くらいに要約してしまえる内容だ。とはいえ、それでつまらないというわけではない。詐欺師の映画というのは細部に常に驚きが隠されていて、それがうまくはまれば退屈することはない。その部分ではこの作品は及第点だろう。
そして、じりじりとした展開になる終盤でも、意外な展開や細部の驚きを保ってじれったい中でもいらいらするほどではない。このじりじりする感じで映画の印象が悪くならないように、ハリウッドでは終盤の展開を早くするということがよくあるが、この作品は展開を端折って速くしてしまうのではなくあくまでも展開力で勝負しているところは好感が持てる。そのあたりがソダーバーグの目に留まったのだろう。
だから、素朴に詐欺師映画として楽しめる。リメイクの『クリミナル』も地味だったが、これはさらに地味な映画。脚本・監督のファビアン・ビエリンスキーはなかなかの実力を持つ監督だと思うのだが、わずか2本の長編作品を残して昨年47歳で亡くなってしまった。遺作となった“El Aura”もクライム・サスペンスということなので、劇場公開しなくてもいいからとりあえずDVDでも発売して欲しいものだ。
<以下ネタばれ>
具体的に面白いと思ったのは、マルコスが妹のバレリアにガンドルフォと寝てくれと持ちかけて、本当にそれを引き受けるところとフアンが最後に「忘れも物をした」といってホテルに戻りバレリアにキスをするところだ。このフアンのバレリアに対する感情は出会いのシーンからうまく描かれていて、それがこの展開にうまく聞いてくる。しかも、それがオチと非常にうまくつながっているのだ。
『クリミナル』の方のオチは実のところよく覚えていないのだが、これはうまくできたオチだと思う。確かに細かい部分では突っ込みようがいくらでもあるが、お父さんのエピソードという嘘ではない本当のエピソードを織り交ぜるところもなかなか上手だ。ひとつ本当があれば、どれが本当でどれが嘘かわかりにくくなる。そのあたりをうまく使って最後まで観客を惑わすことができたのではないかと思う。
それも細かい部分の演出のうまさだろうと思う。これだけうまく演じられる詐欺師がいたらだまされてしまうかもしれないなどとも思った。