クリミナル
2006/3/28
Criminal
2004年,アメリカ,87分
- 監督
- グレゴリー・ジェイコブズ
- 脚本
- グレゴリー・ジェイコブズ
- サム・ロウリー
- 撮影
- クリス・メンゲス
- 音楽
- アレックス・ワーマン
- 出演
- ジョン・C・ライリー
- ディエゴ・ルナ
- マギー・ギレンホール
- ピーター・ミュラン
カジノでお釣りをごまかしてけちな詐欺を働くロドリゴはそこにいた警官に捕まるが、それは実は別のサギ師リチャードだった。リチャードは相棒がいなくなったと言ってロドリゴに相棒にならないかと持ちかけ、手始めにいくつかの簡単な詐欺をやってみせる。
スティーヴン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーのセクション・エイトのプロデュース作品。よくあるサギ師の映画という感じだが、キャストが渋くてよい。
脇役としてはあらゆる種類の映画で目にするジョン・C・ライリーが主役というだけでB級なにおいがしてくるが、セクション・エイトというのはそもそもB級的な作品を作りたくて作ったプロダクションではないかと私は思うから、それも当然なのではないか。
スティーヴン・ソダーバーグはいまでこそ売れっ子だが、ジョージ・クルーニーが初めて彼の作品に出演した『アウト・オブ・サイト』のころはB級と言っていい映画作家だった。この『アウト・オブ・サイト』の主演はジョージ・クルーニーとジェニファー・ロペス、今でこそふたりともトップスターだが、当時ジョージ・クルーニーはイコール『ER』のダグ・ロスであり、ジェニファー・ロペスはラテン系の歌手兼女優に過ぎなかった。彼らのスターダムへの確実な足がかりを作ったソダーバーグはきっと、そんなB級作品が好きだったはずなのだ。しかし、売れっ子となってしまうと超大作を作らされるのがハリウッドのシステム、好きなB級映画を作れなくなってしまったソダーバーグは同じような嗜好を持つジョージ・クルーニーとつるんでB級作品をプロデュースしようとたくらんだのではないか。
もちろん、これは私の想像でしかないが、リュック・ベッソンもフランスで同じようなことをやり、『TAXi』シリーズなどを生み出したから、現在の映画界では大いにありうることだ。
さて、肝心の映画のほうだが、前半はどのような展開になって行くのかとスリリングでおもしろい。主人公のリチャードが新たな相棒となったロドリゴを値踏みしつつ、家族との間に揉め事がありそうな雰囲気、その揉め事というのが実はロドリゴをだますための伏線なのではないかなどとついつい邪推しながら見て行くと、ぐんぐん物語りに引き込まれていく。
そして、大仕事ということになってからも、あれやこれやのハプニングで観客をあきさせない。そして、見て行くうちに、最終的にはリチャードとロドリゴのどちらかが相手をだます大芝居を打っているんだろうということがありありとわかって来て、目くるめく展開とは行かなくなるが、結末まで目を離すことはできなくなる。
そして、このコンゲームに参加する3人の配役が抜群である。ロドリゴを演じるディエゴ・ルナは『天国の口、終りの楽園。』で売り出したメキシコ人俳優、『ターミナル』でも印象的な役を演じた。劇中でリチャードに「善人面」といわれるように人がいい顔をしているが、そういうリチャードを演じるジョン・C・ライリーもどう見ても悪人面ではない。決して美男子ではないが、今まで人のいい役を演じている印象が強いせいか、犯罪者には見えないところがサギ師の役にはぴったりなのかもしれない。
そして、マギー・ギレンホールも不思議な魅力を備えた女優だ。父はスティーヴン・ギレンホール、弟はジェイク・ギレンホールという俳優一家(母もナオミ・フォナーという女優)、美人とはいえないが不思議にどこか倒錯的な性的な魅力を持っているような気がするのは、まさに倒錯的な性を描いた『セクレタリー』という隠れた名作があるからばかりではないだろう。
『ソラリス』や『フル・フロンタル』などのプロデューサである監督のグレゴリー・ジェイコブズはそんなキャスティングに救われて、それなりにおもしろい作品に仕上げている。