トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合
2007/12/20
You, Me and Dupree
2006年,アメリカ,109分
- 監督
- アンソニー・ルッソ
- ジョー・ルッソ
- 脚本
- マイケル・ルシュール
- 撮影
- チャールズ・ミンスキー
- 音楽
- セオドア・シャピロ
- 出演
- オーウェン・ウィルソン
- ケイト・ハドソン
- マット・ディロン
- マイケル・ダグラス
- ボブ・ラーキン
ハワイで結婚式を挙げたカールとモリー、熱々の新婚生活を送るはずだったが、カールの親友デュプリーが家と仕事を失って転がり込んでくる。破天荒なデュプリーに翻弄されてふたりはギクシャクし、カールは会社でも社長であるモリーの父トンプソン氏に悩まされる…
オーウェン・ウィルソン、ケイト・ハドソン、マット・ディロンが出演したコメディ。なぜか日本では未公開だったが、見ればそれも納得?
オーウェン・ウィルソン演じる破天荒なデュプリーが巻き起こす騒動を巡るドタバタ・コメディというところ。デュプリーはいい加減な奴かと思ったら朝食作りがうまかったり、自転車にのめりこんだり、ただいい加減だったり抜けていたりする人物ではないように描かれているが、映画の中盤でそのデュプリーが「IQクラブ」の会報を読んでいるシーンを見せることで、観客にヒントを与える。
このデュプリーはいわゆる「昔神童、今ただの人」で、今は仕事もなくぶらぶらしているわけだが、実は頭がよくって、やる気になれば器用にいろいろなことができる人物というわけである。
このデュプリーのおかげでコメディとしては面白くなっているのだが、この便利なキャラクターのおかげで物語のほうはなんとも中途半端なものになっている。カールとモリーを中心としてカールの親友デュプリーとモリーの父親トンプソンがふたりの関係を複雑なものにするという物語。縮めて言えば義父の嫌がらせにストレスを受けたカールがモリーとデュプリーに当り散らすという話で、あまり気持ちのいいものではない。
この映画のシナリオの問題点は、カールとモリーが「愛し合っている」ということがそもそもの前提になってしまっていて、結局のところ何が起こっても展開に驚きがないということだ。しかも、カールがそれほど魅力的な人物には見えず、その「愛し合っている」ということが前提となっていることにどうも説得力がない。モリーは社長の娘であるにもかかわらず、社長からまったく目もかけられていないカールという社員と結婚することに決めたわけだから、そこには実はカールがすごい魅力を持っているとか、モリーが父親に反発心を抱えていて、それをカールと共有しているとか、そういった前提が必要なのではないか。モリーは(知らないとはいえ)カールを疎む父を疑うこともせず、むしろカールを非難する。
そのモリーもどうも今ひとつ好感の持てない人物だ。愛する夫の親友をあつかましかったり、だらしがないという理由だけで毛嫌いし、自分が夫にあまりかまわれなくなるといつでもそこにいるデュプリーと親しくするのだから、社長の娘だけあって自分勝手だと言われても仕方がない。
この違和感というか、いやな感じは、ここに登場する人々がみな自分勝手だからだろう。彼らの対人関係は常に要求から始まる。「こういうことをしてあげよう」とか、「こんなことをしよう」ということではなく、「こうしてくれ」とか、「何でこうしてくれないの」という要求を相手に突きつける。悩んでいるカールに対してモリーは「どうして相談してくれないの」と言う。それは当然な疑問ではあるが、悩んでいる相手に突きつけるべき要求ではない。
もちろんこういう要求で衝突が起きないと、ドタバタ喜劇には至らないから、物語上仕方がないといえば仕方がないのだが、そんな不愉快な展開に頼らなければ物語を進めることができないシナリオはあまり面白いものとはいえない。唯一その自分勝手さから逃れているデュプリーをもう少し生かせば、こんなとげとげしい映画にはならなかったと思うのだが。
オーウェン・ウィルソンはなかなか面白い役者だと思うのだが、どうも出演作に恵まれていないのではないか。そういえば、オーウェン・ウィルソンの弟ルーク・ウィルソンも『あなたにも書ける恋愛小説 』でケイト・ハドソンと共演していたなぁ…