パッチギ! LOVE&PEACE
2008/1/7
2007年,日本,127分
- 監督
- 井筒和幸
- 脚本
- 羽原大介
- 井筒和幸
- 撮影
- 山本英夫
- 音楽
- 加藤和彦
- 出演
- 井坂俊哉
- 中村ゆり
- 西島秀俊
- 藤井隆
- 風間杜夫
- キムラ緑子
- 手塚理美
- ラサール石井
- 寺島進
1974年、東京へと越してきたアンソンは乱闘しているところを国鉄職員の佐藤に助けられる。その佐藤はアンソンの妹キョンジャに一目惚れ、そのキョンジャは店の客にスカウトされる。アンソンの息子チャンスの病気は筋ジストロフィーと診断されてしまう…
京都を舞台に在日の人々を描いた『パッチギ!』の続編。キャストは一新されたが、物語は続いている。
前作もそうだったが、この作品もなんと言っても主人公達の日々が非常に面白く描かれている。もちろん在日ということが作品の中心なわけだが、それはあまり考えないようにしてみれば当時の東京のエネルギーを感じることができる。藤井隆はいなかっぺという在日と対比される存在として表れる。当時の東京はそういった外からやってきた人でできた都市だった。まあ今でもそうだが、東京というのは田舎者が集まってできた都会なのだ。だからそこではさまざまな文化が混じり、そこにエネルギーが生まれる。藤井隆演じる佐藤がアンソンたちと仲良くなるのはキョンジャにほれたという要素が大きいわけだが、東京において同じよそ者であるという居心地のよさもあったのだ。
キョンジャが芸能界の翻弄されるエピソードは、外からやってきたものを利用しようとする東京の人たち(もちろんその多くは外からやってきたのだが)と新たに東京にやってきた田舎者達の相克の象徴だ。その衝突から感じられるエネルギーは前作にも感じられたエネルギーだ。
全体的に演技がどうも今ひとつという印象はある。ラサール石井とか国生さゆりといった脇役はうまいのだけれど、主人公のふたりがどうも今ひとつでそれが作品全体をだらけさせてしまっているという気がする。沢尻エリカがもう一度キャスティングされていたら、まったく違う作品になっていたのではないかと思う。
また、当時の風景もどうもきれい過ぎるのに違和感がある。前作は徹底的に作りこむことで当時のごみごみした感じを見事に作り上げているという印象だったが、この作品は今も残っている当時を忍ばせる景色を中心にロケで作っているので、どうしても時代感が薄れてしまっているのかもしれない。もう少しディテールにまでリアリティがあふれていれば、物語に入っていくことができたような気がするのだが。
そのような細かい要素によってこの作品は今ひとつ没頭できにくい作品になってしまっている。そのために過去の映像と重ねることによって語りあげていく在日の人々の気持ちもちぐはぐなものに映ってしまう。もちろん言いたいことはわかるのだが、それが自然に入ってこず、説教臭いものになってしまっているように思える。
太平洋戦争当時の再現シーンも果たしてそれが必要だったのか、それが語られる必要はあるが、あそこに凝った映像を使う必要が果たしてあったのか。そのあたりのバランスも今ひとつちぐはぐだ。
在日の人に対する差別は今もなくなってはおらず、その歴史は振り返るべきことも多い。しかしここではそれが今ひとつ今と結びついていないし、目からうろこが落ちるような事実というのもあまり無い。個人的にはもう少し四三事件について詳しく描いて欲しかった。まあ、この作品で太平洋戦争について描いたから、もし続編が作られるとしたら、そこで四三事件について語られるのかもしれない。それはそれで見てみたいが、キャスト選びは慎重に…