俺が犯人(ホシ)だ!
2008/1/16
I Died a Thousand Times
- 監督
- スチュアート・ヘイスラー
- 原作
- W・R・バーネット
- 脚本
- W・R・バーネット
- 撮影
- テッド・マッコード
- 音楽
- デヴィッド・バトルフ
- 出演
- ジャック・パランス
- シェリー・ウィンタース
- ロリ・ネルソン
- リー・マーヴィン
恩赦で刑務所を出た強盗犯のロイ・アールは新たな強盗計画をボスのマックに告げられ、山奥のロッジに赴く。そこで仲間となるふたりの若者に会うのだが、ふたりはロスから女を連れてきており、ロイはそれが気に入らず…
ジャック・パランス主演のハードボイルド・アクション。ハンフリー・ボガード主演の『ハイ・シエラ』(44)のリメイク。
50年代のアメリカのアクション映画というのはまったくかざりっけがなくていい。特に、犯人が主役のクライム・アクションは非常にハードボイルドでクールでいさぎいい。必ずヒロインが登場し、恋に発展するというお決まりコースはあるにしろ、それはあくまで彩りで、映画の中心はあくまで男の物語だ。
これはもちろん40年代からの流行であるフィルム・ノワールの影響だ。30年代にはアクションといえども、最後には主役とヒロインが結ばれて大団円となっていたのが、40年代からのフィルム・ノワールでは男くさく救いの無い物語が多くなり、女性の登場人物はヒロインであることを辞めてファム・ファタールとなった。
ただ、フィルム・ノワールというのはどうしても男性向けの映画で女性やファミリーに受けるものではない。ハリウッドとしてはその要素を入れながらカップルでも見てもらえるような映画を作る必要があって、この映画のような作品ができたのだろう。
この作品は、フィルム・ノワール的な要素はあるが、登場するふたりの女性はどちらもファム・ファタール的ではない。主人公のロイはこのふたりの女性に悩まされるが、決して悪女というわけではなく、ある意味ではまっとうな恋物語が展開されているわけだ。そのあたりが女性などにも安心してみてもらえる雰囲気を作っていると言えるだろう。
ただまあ、平凡と言ってしまえば平凡な映画だ。女とか犬とか仲間とかいろいろな伏線が用意されていて、それが物語にいろいろな展開を与えるわけだけれど、その展開は予想の範囲内をでない、と言うよりはほとんど予想通りに展開していく。女性関係だけがなかなか予想が付かないのだが、それは物語の本筋とはほとんど関係が無い。
だから、この映画はその面白さのほとんどを主人公を演じたジャック・パランスにおってしまっていると思う(あとは犬が少し)。ジャック・パランスは『シェーン』(53)の悪役で成功して有名になり、主役級となったが、悪役顔なのでヒーローを演じることはできない。この作品は主役だが犯人役なのでまさに適役で、迫力のある犯人を演じて抜群の存在感を見せている。このロイの何を考えているかわからない無表情のおかげでこの作品はスリルを保って及第点の作品となっている。
このジャック・パランスは50年代前半に2度アカデミー助演男優賞にノミネートされたが受賞を逃し、91年に『シティ・スリッカーズ』で受賞した。1919年生まれだからこのときすでに72歳、名優とかスターとかいう印象は無いが、こういう役者にハリウッドは支えられてきたのだなという気がする。60年代以降はヨーロッパでも仕事をし、ゴダールの『軽蔑』などにも出演したが、ほとんどはマカロニ・ウェスタンも含め主にB級というべき映画だった。でも、その中にはきっと面白い映画もあるんだろうなぁ…