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スパーク 見えない境界線

★.5---

2008/2/21
Spark
1998年,アメリカ,103分

監督
ギャレット・ウィリアムズ
脚本
ギャレット・ウィリアムズ
撮影
サミュエル・アミーン
音楽
マーク・アンソニー・トンプソン
出演
テレンス・ハワード
ニコール・アリ・パーカー
ブレンダン・セクストン三世
トム・ギルロイ
preview
 荒野の一本道をドライブするアフリカ系のカップル、うっかり犬を轢いてしまった直後エンジントラブルで動けなくなってしまう。運良く車が通り、近くの修理屋まで牽引してもらうが、白人ばかりの小さな町にバイロンは苛立ちを募らせていく。
  テレンス・ハワード主演の社会派サスペンス。全体に緊迫感が漂うが…
review

 この主人公のバイロンは白人ばかりの小さな町の人々の視線にさらされ、トイレに「黒人を殺せ」という落書きを見つけてイライラを募らせていく。ダイナーでは恋人のニーナをじろじろと見る男を見つけ突っかかるが、その男スチュアートがふたりの絵を描いていたとわかる。これはつまり、バイロンが根拠の無い反感を勝手に育て、勝手に人々と反目して行っているということなわけだが、そこにまったく根拠が無いわけではなく、その町の人々の視線はよそ者である彼らに対して決して暖かくは無いのだ。
  そこにあるのは人間に根源的に存在するよそ者(エイリアン)に対する恐怖→差別であり、黒人のいない環境で育った白人たちにとって黒人がエイリアンである以上仕方の無い反応であるともいえるだろう。そして、その見えない恐怖と差別に対するバイロンの過剰な反応が彼らの恐怖を補強してしまう。バイロンはニーナといるときには優しい男であり、仲間内では決して乱暴なほうではないのだろう。しかし白人達には彼が怒り狂う黒人の男に見えてしまい、理解しあう道は閉ざされてしまう。
  それでも最初に声をかけた青年ムーニーだけは唯一彼に理解を示す。しかしそのムーニーも物語が進むにつれて精神的な危うさを露呈し、彼がバイロンと付き合うのには隠された意図があるのではないか(その大部分は父親に対する反感らしいとわかるが)と思えてくる。
  それも含めてこの映画はずーっといやーな気持ちのする映画なのだが、それはここに登場する人々のほとんど(あるいはすべての男性)がエゴをむき出しにしているからだろう。人種差別とかよそ者とか言う以前に彼らはとにかくエゴイスティックなのだ。それが彼らの理解を阻害し、暴力的な行動を取らせる。バイロンは典型的なDV男だと思うが、彼だけでなくここに登場するほとんどの男はその素養があるといっていいだろう。それはアメリカという国に深く巣食った病巣であり、武器が簡単に手に入ることでそれを助長しているわけだが、この作品はそれを問題化するというよりはただ描くだけであるために最後までいなーな気持ちが残ってしまう。
  バイロンはこの町のせいではなく、以前もこれからもこんな奴だ。ダイナーの女主人がいうようにそんな男とは別れたほうがいい。でも、そうで無い男に出会うのは宝くじに当たるくらい難しい。そんなことさえ感じさせる救いの無い作品だ。

 しかし、アメリカには(特にB級映画で)陸の孤島のような小さな町に闖入者がやってくるという映画が多いような気がする。おそらく西部劇に端を発しているのだと思うが、いわゆるサスペンスだけではなく、『ウェルカム・バクスター』なんていうティーンズ映画でもそんな話があった。
  アメリカという国はよく言われているようにやはり壮大な田舎なのだろう。だからこんな話が次々と出てくる。いくら情報化社会と入っても、物理的な距離が広がればやはり情報は伝わりにくいし、人間の心理は変わりにくい。そんなことを感じさせる作品でもあった。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ1990~2000

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