チル・アウト!
2008/3/2
Descongelate!
2003年,スペイン,97分
- 監督
- フェリックス・サブロソ
- 脚本
- フェリックス・サブロソ
- ドゥーニャ・アジャソ
- 撮影
- キコ・デ・ラ・リカ
- 音楽
- マリアーノ・マリン
- 出演
- ペポン・ニエート
- カンデラ・ペーニャ
- ロレス・レオン
- ルーベン・オカンディアノ
場末のバーで芸を披露するコメディアンのフストの所に有名な映画監督アイトールがやってくるフストの芸が気に入ったアイトールは彼に映画の主役を勤めてくれという。喜んで引き受けたフストは監督を自宅に招待するが…
スペイン発の少しブラックなコメディ映画。良くも悪くもオーソドックス。日本未公開。
スペイン映画らしいブラックな味わいを加えているにもかかわらず、どうにも毒にも薬にもならないという印象を与える映画だ。
ある程度ネタばれさせると、映画の主役に決まったフストと奥さんのイリスが監督のアイトールを食事に呼ぶと、アイトールはコカインの過剰摂取で死んでしまうという話。まだ契約が済んでいないために大金がふいになってしまうと考えたイリスがアイトールを氷付けにして契約が済むまで隠しておこうという計画を立てるという話。
その死体を巡ってフストとアイトールと上の階に住むフストの母親と弟と、さらにプロデューサーとアイトールの恋人がドタバタを繰り広げることになる。とまあこんな感じの映画だ。
そして、まあそれだけでもある。“死体”が存在していることによって多少ブラックになってはいるのだが、勝手に死んだ死体であって殺人ではないからそれほどおどろおどろしいものにはならない。ひとつ殺人が起こっていればもうひとつ起きてもおかしくは無いという恐ろしさというかスリルも存在するのだが、この虫も殺せないようなフストが主人公ではそんなスリルもありえない。
同じスペインのコメディで『みんなのしあわせ』というのがあって、これもある人が死んでしまって、そこから生まれた大金を巡ってドタバタが展開されるという話だったが、こちらはかなりグロテスクな露悪趣味があって、これが映画にリアリティを加えてなかなか面白いものになっていたのだが、この作品は結末も含めてどうも作り話っぽさが否めない。
コメディというのはいわゆるドラマよりもリアリティが必要なジャンルだ。笑いというのは夢物語からはなかなか生まれず、見る人の現実と近いところにあってはじめて生まれるものだ。自虐的な卑近なギャグでも笑ってしまうのはそこに演じる人の生活がにじみ出ているからであって、それが演じられていることが見えみえだったら面白くもなんとも無いはずだ。
この作品はそのあたりのリアリティがかけているがゆえに、今ひとつ面白くない。笑えるところが無いわけではないのだが、結局のところ「だからなんなんだ」と思ってしまうところがある。暇な時間をぼんやりとつぶすにはいいが、それ以上のものは無いという感じだ。