アヒルと鴨のコインロッカー
2008/3/21
2006年,日本,110分
- 監督
- 中村義洋
- 原作
- 伊坂幸太郎
- 脚本
- 中村義洋
- 鈴木謙一
- 撮影
- 小松高志
- 音楽
- 菊池幸夫
- 出演
- 濱田岳
- 瑛太
- 関めぐみ
- 大塚寧々
- 松田龍平
- 関暁夫
大学に入学し、仙台に引っ越してきた椎名は近所への挨拶で隣に住む河崎という変わった男と出会う。河崎は逆隣に住むブータン人のために“広辞苑”を本屋に奪いに行こうと椎名に持ちかける。椎名は河崎に押し切られる形で本屋に向かうが…
人気ミステリー作家・伊坂幸太郎の同名小説の映画化。驚きのトリックで映像化不可能といわれた作品をどう料理するかが注目されたが、結果は…
私は原作を読んでから見たので、はっきりいってまったく楽しめなかった。原作の“あの”トリックをいかに映像化するのかという楽しみはあり、そのシーン自体はまあ「あーなるほど」と思う感じで悪くはなかったのだが、全体の進め方がどうにも納得がいかない。原作はある程度の長さがあり、それを2時間にまとめるのだから、どうしても落としていくところが出てくるわけだけれど、序盤は原作をかなり丁寧に映像化してゆっくりとした展開で中盤は急速に進み、終盤またゆっくりと進む。面白いのは中盤の展開なのに、それがばっさりと落とされてしまっていることでミステリーとしての面白みがほとんど奪われてしまっている。
しかも、原作で非常に魅力的な登場人物であるペットショップの店長麗子の存在感が薄く、物語に深みがない。しかも、原作では重要な役割をする猫シッポノサキマルマリも登場しない。尻尾の先が丸まった猫をどうやって見つけてくるかというのも映画化の楽しみの一つだったので個人的にも残念だ。
しかし、原作を読んでいなければ、伊坂幸太郎のトリックの中でも屈指の驚きを誇るトリックだけにミステリーとして楽しむことはできるだろう。映像で見ると少し卑怯という気もしないではないが、決して矛盾があるわけでもないので、いいと思う。ただ、この肝心のトリックのネタが中盤にばらされてしまうので、そのあとの展開がだらけてしまい、構成としていまひとつという気がする。もう少しこのバラシを引っ張って、そのあとの展開を圧縮したほうが映画としてしまったのではないかとも思う。
役者たちも派手ではないけれどそれなりにまとまった演技をしていると思う。主役の濱田岳はなんだかすごく小さく見えるが、存在感は大きくて、顔も動きも派手な瑛太に負けない演技を見せている。瑛太と松田龍平はどちらも大げさなタイプなので、すこし食傷してしまう感はあるが、まあ映画全体が淡白なだけにバランスは取れているのではないかと思う。
原作と役者はいいが、脚本と演出がいまいちというのは同じ伊坂幸太郎原作の『陽気なギャングが地球を回す』でも感じた。映画化が難しいからそうなってしまうのか、それとも単に脚本と監督に問題があるだけなのか。ハリウッドあたりで映画化したら面白い作品になりそうだが…